Final Fantasy W

Cecil story〜

 

 

 

 

それは、真実を伝える、物語――

 

 

 

 

登場人物

 

 

 

 

 

第一話「始まり」

多くのものを失い、それでも青年は親友とともに道を行く。

 

第二話「想い」

無茶のあまり――倒れた女性。全ては、想いを寄せる青年のために……。

 

第三話「賢者」

狡猾な魔物犇く洞窟で。青年達は、経験豊かな賢者と邂逅する。

 

第四話「涙」

砂漠で邂逅する、賢者。しかし彼らは、立ちはだかる悲劇を知らなかった――

 

第五話「炎」

立ちはだかる氷壁――しかし少女の心の奥に潜む、炎の恐怖に。

 

第六話 邂逅

何故――かつて親友と呼んだ男は今、自分へとその槍を突きつける。

 

第七話 虜囚

囚われた彼女は見た。目の前で繰り広げられる、卑劣なる企みを――

 

第八 孤独

全ては、波の中に消え――青年は一人、心の内を漏らす。その膝、折れようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物

 

 

セシル・ハーヴィ

 

鬼畜。

 

カイン・ハイウインド

 

裸男。

 

ローザ・ファレル

 

尾行。

 

ギルバート・クリス・フォン・ミューア

 

不幸。

 

ヤン・ファン・ライデン

 

沈着冷静なファブールのモンク僧。

僧兵隊の隊長を務めるほどの鍛え抜かれた実力と、

それほどの高い地位でありながら、決して驕ることの無いその沈着な精神は流石の一言。

 

 

テラ

 

耄碌。

 

リディア

 

ロリ。

 

ゴルベーザ

 

っち参照(爆)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一話 始まり

 

僕の名はセシル。バロンに仕える暗黒騎士だ。

元々は、バロン飛空艇団『赤い翼』を指揮していたが、陛下の不評をかってその地位を剥奪。

親友であり、竜騎士団一番隊隊長だったカインと共に、ミストにボムの指輪を届けなきゃいけなくなった。

 

……けど、何故だろう?

初めて受けたこの任務なのに――まるで何十回も行なってきたような気がするのは。

なんだかこのままカインが裏切ったりクリスタルを取り合ったりローザがつかまったり

召喚士の子供が成長したり忍者の国の王子様に会ったり生き別れの兄さんに再会したり

月にいる邪悪な意思と戦ったりするような気が強烈にするのは何故だろう?

「何をぶつぶつ言っている――行くぞ」

カインの言葉と共に、僕達はミスとの洞窟を抜け、ドラゴンを倒して。

いざ、ミストの村へ――

「……どうした? セシル」

……カイン。親友の君に、どうしても頼みたいことがあるんだ。

「頼み……? 何だ、言ってみろ」

……その装備、全部脱いでくれないか?

 

 

 

そして僕は、ミストの村で召喚士の少女を見つけ、カインとはぐれてしまった。

しかし、彼の装備を売り払えば当分は資金に困りそうになさそうだ。

カインもきっと、そのうち見つかるに違いない。

これから、全裸の竜騎士がどこかに倒れていないかどうかの噂を常にチェックしておこうと思った僕だった(鬼畜)。

 

 

 

 

第二話 想い

 

僕は、バロンに仕える……いや、かつては仕えていた暗黒騎士。

ミストで、親友のカイン(全裸)とはぐれて……僕はすぐ側に倒れていた、

僕達にいきなりHP63235とかいう正直戦うのが馬鹿馬鹿しくなるほどのタイタンを召喚した少女を背負い、

たった一人でなんとか砂漠の町、カイポまでたどり着いた。

……正直、この行動が正しかったのかどうかはわからないけど――

僕の中にある確信のような予感が、この少女はレベルが上がればとてつもない力を備えるということを告げていた。

多分、この後僕は彼女がバイオを覚えるまで暗黒で戦い、バイオを覚えたとたんに殺され、

その語気が遠くなるほどの時間を気絶して過ごすことになるような予感がするのは気のせいだろうか?

「おにいちゃん……なにぶつぶつ言ってるの?」

と――僕は少女『リディア』の言葉に我に返った。

そうだ、こんなことをしてる場合じゃない。

ローザが、僕を追って高熱病で倒れ、ここに運び込まれたという話を聞いたのだ。

……この町に来るためにはミストを通る以外の通路は無く、何故僕より早くカイポに着いたのか――

そんな疑問が一瞬頭をよぎるが、今思えばそんなことは瑣末なことでしかなかった。

そう、本当の疑問――そして恐怖は、これからだったんだ――

「ローザ! ローザ……」

「バロンから来た娘さんが、村の前で倒れていたんです。 可哀想に、高熱病にやられて……」

「そうですか……どうもありがとうございました。……ローザ、判るかい……僕だよ……」

「うう……し、死なないで……」

「僕はここだよ……だから、目を開けてくれ……ローザ……!!」

「死なないで……お願い……死なないで――ロドリゲス!」

 

!?

 

な……何で……何で――!?

「何でつい先刻、ネミングウェイに変えてもらったばかりの僕の名前……セシルからロドリゲスに変えたことを知ってる!?」

 

 

 

 

 

「死なないで……死なないでボルティウス!」

「ああっ!? わざわざ全力疾走して変えてもらった僕の名前をすでにチェック済みッ!?」

「おにいちゃん……おねえちゃんも、二人とも無理した生き方をしすぎだよ……」

 

 

 

 

第三話 賢者

 

やあ、一週間ぶりだね。僕の名はボルティウ……改め、セシル。

またネミングウェイのところに行って、名前を元に戻したバロンの元暗黒騎士さ。

どういう手段を用いたか判らないけど、この僕の行程を先回りしてまでストーキング……もとい、

追いかけてきた僕の愛しい人・ローザ。

彼女のかかった高熱病は、『砂漠の光』という幻の宝石が必要らしい。

何で病気で、宝石が必要になるのかが永遠の謎っぽいけど――それに突っ込みを入れる猶予も無かった。

彼女を死なせるわけには行かない。イベント的に死なないと誰かが告げるけど、そんなことは関係ない。

僕とリディアはかくして、砂漠の光の唯一取れるダムシアン東の『アントリオンの洞窟』を目指し、

ダムシアンへの唯一の陸路である地下水脈へと足を踏み入れていた。

……きっと五年後辺りには、この巨大な山脈を切り崩して巨大な機械仕掛けのゲートを開通させたり

鋼の巨人から奪った特殊技術を組み込まれてそこを僕のように暗黒騎士見習いが歩いたりするんじゃないかと

またも僕の頭の中で直感が腹炊いているんだけれど――

「……何をぶつぶつ、独り言を喋っておるのじゃ? いかにバロンの暗黒騎士、腕が立つとはいえ、

 この地下水脈で気を抜いていられるほど、ここは安全ではないぞ?」

その声をかけてきたのは――この地下水脈で出会った、テラという一人の老人。

ただの老人じゃない――あの有名な「賢者」テラとは、この人のことだったのだ。

五年後はどうあれ――今のこの地下水脈は自然の迷宮。

しかも最近、モンスターの活性化に――その最奥には、8匹の大蛇が現れるとも言われているこの危険な場所。

テラの賢者としての魔法の腕前は、きっと頼りになってくれるはずだ――

そうこうしているうちに、僕達の前に現れた魔物――くっ、数が多い!

「こういうときこそ、任せておれ……この私の『賢者』としての魔法の冴え、とくと見せてくれよう!

 岩砕き、骸崩す、地に潜む者たち……集いて赤き炎となれ!

テラは頼もしい台詞と共に、詠唱を開始して――

「喰らうがよいわ、邪悪な魔物ども! ――ファイア――

「――いくよ、ブリザガッ!」

 

こぉぉうぼごごごぼごごごごっ!!

 

「…………ファ、ファイア――」

「まだまだ……バイオッ!!」

 

でゅーんてゅるてぃーん!!

 

「………………」

「とどめ……メテオッ!」

 

ぎゅーんぎゅーんぎゅーんぎゅーん……

 

 

 

「……参考程度に、聞いておくが……二人とも、レベルは一体幾つじゃ……?」

「リディア、92だよっ♪」

「あ、僕は87です」

「……この鬼どもめ」

 

 

 

 

第四話 涙

 

やあ。僕の名はセシル。

肉体は暗黒に身を落としていても、その内には光の輝きを持った暗黒騎士さ。

なんだかこの連載が始まってから、僕が鬼とか邪悪とかそんな根も葉もない噂もあるけど、

まあ、こんなことはよくあることさ。

プリキュアだって、黒と白の中身は実は逆だろうとか、いつの時代も有名人はあらぬ噂がつき物。

もちろんこれを読んでくれているみんなは、本当の僕がどっちか、言わなくてもわかってくれているよね?

「もちろん、鬼畜――」

「暗黒」

 

ちゃん! じゅいじゅいじゅいっ!!

 

「ねえ……プリキュアってなに?」

「ああ、作者が今熱を上げているアニメのことさ」

「??」

「まあ、いずれ判るよ」

ミストの村で助けた少女・リディアの頭を軽く撫でる。

こういうタイムリーなネタは、時間がたつと面白みを失ってしまうものだからあまりお勧めはしないんだけど、

まあもともとこの連載自体、全くあの男は本気で書いていないから問題もないし――

「……何をぶつぶつと呟いておるのじゃ」

と――僕に語りかけてきたのは、偉大なる賢者・テラ。

敵との先頭になるたび、僕の『暗黒』かリディアの魔法で瞬殺しているから、

その偉大さはまだ見えないけど――とても凄いんだと思う。

というか、凄くなかったらそれなりに手は考えてはあるんだけど……まあ、後のお楽しみだね。

「…………そ、それよりもじゃ。セシル……何故私は、服を着てはいかんのじゃ?」

「え!? おじいちゃん、はだかなの――?」

「リディア見ちゃ駄目だ眼が腐るから……いえ、特に理由は無いんですが、なんとなくというか……」

……地下水脈の主・オクトマンモスをリディアの「ファイガ」で瞬殺し、僕達は一路・ダムシアンを目指す。

やがて、ダムシアン城の優美な外観が、砂と空の溶け合う所でゆっくりと顔を覗かせた――その時だった。

耳をつんざくプロペラの轟音に、僕達は思わず空を見上げる。

その先にあるのは、優美なフォルムをその空に浮かべた、天駆ける船――飛空艇の隊列!

「……赤い翼!?」

「まさか、ダムシアンを……――アンナ!!」

「――まかせて、あれくらいなら……私の魔法で――!!」

愕然となる僕達に代わって、詠唱を開始するリディア。

確かに、彼女の『メテオ』なら、赤い翼を撃墜することも出来るだろう。

だけど――

「駄目だリディア!」

「どうして!?」

必死に、リディアの詠唱を止めて――僕はあらん限りの声で、その理由を叫んだ。

「ここで壊滅してくれなきゃ――あの城の宝物庫にある宝を展開的に持っていきづらくなるだろう!?」

 

 

 

 

 

瓦礫と化した城内。

あるものは体の痛みと苦しみに呻き、またあるものは心の絆を繋いだ相手を失った痛みに泣き崩れる。

――それは、あまりに酷かった。

「うっ……うっ……アンナァ……ううっ……」

目の前で今、愛する人を失った痛みに泣く青年――ギルバート。

ダムシアン第一王位継承権所有者である彼は、しかし今――ただ泣き崩れるだけだ。

そんな彼を前にして――僕も胸の痛みに、涙が零れそうになった。

何故なら――

「よく考えたら……赤い翼を返り討ちにして、その恩を売った方がもっと宝を手に入れられたかな……」

「ちょっと失敗しちゃったね、セシルお兄ちゃん」

「うっ……うう……くぅぅぅぅっ……こんなのをこれから、僕は案内しないといけないのか……ッ!!」

 

 

 

 

第五話 炎

 

やあ、僕の名はセシル。えっと……以下略ということで。もう僕が誰かは判るよね?

それにしてもこの連載、本当に続けるつもりなのか……無謀だなぁ。

「……どうしたの、セシルお兄ちゃん?」

――そんな僕に話しかけてきたのは、リディア――緑色の髪をした、可愛い少女だ。

あどけない表情に、心配そうな表情を浮かべるその様はとても可愛い。

……あまりに可愛すぎて――

「お……お兄ちゃん!?」

僕は思わずリディアを抱きしめる。

そしてそのまま、そっとリディアの耳元で、彼女にこの胸を焦がす思いを――

 

――ぴっ

とととととととととととととと。

 

「………………いろいろといいたいことはあるけど……これはどういうことだい、ローザ?」

「ごめんなさい、ちょっと手が滑っちゃったわ」

そう言って、心配そうに僕を眺める金髪の美しい女性――ローザ。

だがその瞳の奥は心配そうな輝きなど全く見せておらず、矢を抜こうともしない。

……というか、少しその表情が怖いんだけど……。

「セシル……あなた、自分が何をしようとしているのか判ってる?」

「くっ……僕は幼女が好きなんだ! 手を出さないでくれ!」

「――矢、脳天に刺したらちょっとは直るかしら?」

大量の矢を番えるローザ。

譲れない思いに、剣を構える僕。

そして僕達のやりとりを、おろおろしながら眺めるリディア――

しかし均衡を破ったのは、三人の内の誰でもなかった。

「――二人とも、いい加減にしないか!」

どこか、気弱そうな――しかし精一杯に振り絞られた制止の声に、僕達はゆっくりと向き直る。

そこにいたのは、はっと音が立つほどに見目麗しい、砂漠の国の王子様――

ではなく。

「……一体どうしたんだ? カエル」

「そうよカエル、突然大声なんか出して」

「カエル、お兄ちゃんとお姉ちゃんのことはいつものことなんだから……気にしちゃ駄目だよ」

「カエルカエルカエルカエル呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁっ! 僕にはれっきとした、ギルバートという名前が――」

「判った判った。……だから少し黙っていてくれないか? カエル」

僕が口を摘んで持ち上げると、そのカエル――赤い色をしたカエルはゲコゲコと体を振った。

彼の名はカエル。……確か昔、ギルバートとか言う名前の王子だったと思うけど……彼の唯一の存在価値

『かえるのうた』を利用するために始終カエルになっているものだから、ネミングウェイに名前を変えてもらったんだ。

――アントリオンの洞窟から秘石『砂漠の光』を手に入れた僕達は、カエルの持っていたホバー線を利用し、

ローザの熱病を治すことに成功した。だが、ミシディアの水のクリスタル、ダムシアンの火のクリスタルを奪ったバロン。

彼らが残り二つのクリスタル――風と土のクリスタルを放っておくわけが無い。

だから僕達は休む間もなく、風のクリスタルを持つ国・ファブールへと急ぐため、

ファブールの修行僧達が利用する険しい霊峰・ホブス山越えをするべく、一路北へと向っていたのだった。

「……ううっ……あんまりだ……こ、こんなことなら国政をミレイユに任せずに、

 あのまま国に残って国家の再建に取り組んでおけばよかった……」

「……ミレイユ?」

 

――霊峰、ホブス山。

ダムシアンからファブールへと唯一渡ることの出来る陸路。

だが――その山は険しく、絶えず襲い掛かる寒波に強力なモンスター。

霊峰というのは、同時に冒険者達にとっては死の危険が常に付きまとう難所でもあるのだ。

……けれど、弊害はそれだけじゃない――

「リディア。 ファイアを唱えてみて」

「………………」

ホブス山の入り口を塞ぐようにして屹立する、巨大な氷壁――

強烈な寒さを含むホブス山の風が集中し、精製される大自然の障壁だ。

この巨大な氷の壁は、剣で砕くことなど当然出来ないし――ちょっとの炎程度で溶かすことは難しい。

だが、黒魔道士がいれば――初歩魔法である『ファイア』ひとつで簡単に消し去ることが出来るだろう。

そして、僕達の仲間であるリディアは魔道士――何の問題も無いかのように見えた。

……しかし――

「リディア?」

「あなたなら必ず出来るわ!」

「…………いや」

「?」

「炎はいや!」

涙を零し、そっぽを向くリディアの姿に――僕は思い出していた。

彼女の生まれ故郷・ミストは、僕の持ってきたボムの指輪の、炎によって……。

……けれど。

けれど――

「いーい? リディア。この氷を溶かす力があるのは、今あなたしかいないの」

「………………」

「私たちがここで氷を溶かし、ファブールへ行かなければ、もっと沢山の人たちが恐ろしい目に遭うことになるの……。

お願い……勇気を出して!」

そうだ――僕達はそれでも、彼女に唱えてもらわねばならないのだ。

炎の魔法、ファイアを――

「リディア、お願い!」

「頼むよリディア!」

「………………」

……ん?

待てよ……ちょっと待て?

「リディア……確かこの前、オクトマンモスを倒すときに『ファイガ』使ってなかったっけ?」

 

ひきききっ!!

 

――場の空気が凍った音を、僕は耳にしていた。

僕はこの凍った空気を溶かす術を知らないから、とりあえず今日はここまでのようだ。

 

 

 

 

第六話 邂逅

 

やあ、本当に久しぶりだね。僕の名はセシル。

どこかの似非FF4続編主人公みたいな地味さは微塵も無い、超有名作品の主人公さ。

なんというか……主役の僕が言うのもなんだけど、まだ連載用の原稿が完了していないのに、

よくこんな中身の殆ど無い小説を執筆していられると思うよ。

……というより……何だか僕の目から見ても明らかに今の作者のテンションはおかしいんだけれど。

笑顔があまり似合っていないのに始終ずっとにやにやしていて、年甲斐も無く鼻歌なんかを歌いながら

足の指を角にびつけて苦痛にのたうちまわっていたりとか。

……いくら連続して嬉しいことが――特に昨日の一件があまりに嬉しすぎることだからって、

かえって現実感を見失っていて、ようやく今になって実感がわいたからって、

訳も無く叫んだり跳ねたり、『これって現実か?』と思って弁慶の泣き所を軽くハンマーで叩いて

痛みに転げまわりながらも「そっか……夢じゃないのかぁぁ!」とかマジで喜んでいるのは見ていて気持ち悪――

「セシル殿! ……今は目の前の敵に集中していてくだされ!!」

と――僕はその声にはっと現実に返る。

僕に声をかけてきたのは、精悍な顔つきを緊張に引き締めた辮髪の壮年男性――

ファブールモンク僧兵隊隊長ヤン・ファン・ライデン。

常に沈着を尊び、的確な指示と強力な拳法の腕で切り抜ける実力派だ。

奥さんが妙に包丁を見る目がアブなかったことを除けば――尊敬に値する人物だろう。

 

……この小説では僕以外で唯一、まともな人間だ。

 

「自分のことを棚にあげて……」

「ん? 何か言ったかい? 『カエル』」

元どこかの王子だった――今はただのカエル男は、何も言い返さずただ泣き続ける。

まったく。少しは僕やヤンを見習って欲しいものだね。

……しかし――こんな述懐をしていられるほど、実のところ状況は良くは無かった。

ダムシアンを襲撃し、火のクリスタルを奪ったバロン――『赤い翼』は、当然ながら次にこの国――

この国にある風のクリスタルを奪いに、襲撃を仕掛けてきたのだ。

しかし自慢の僧兵隊は、その前に通ってきた霊峰・ホブス山でヤンを除き全滅――

剣もルックスもいいこの僕と+αでなんとか食い留めようとしたけれど――

「……だんだんセシルが傲慢になっていくな――ぶぎゅっ!?」

足元でなにかほざくナマモノをとりあえず踏みつけて、僕は述懐を再開する。

食い止めようとしたけれど……やはり物量には勝てず、

僕達はとうとうクリスタルルームの中まで後退することとなった。

背水の陣――もう、後がない。

これ以上、数にまかせた攻撃をされては――

「……来るぞ!」

厳重に封印された、クリスタルルームの扉が何かの力に弾き飛ばされ――

僕達はそこに、ひしめく大量のモンスターを想像していた。

しかし……現実に、そこにいたのは――たった一人の、男――

「……久しぶりだな」

「……!!」

忘れるわけがなかった。

竜を模した、その兜。クリスタルルームの中で蒼く輝くその甲冑。

そして、左手に構えた一本の長槍――間違いない!

「全裸男カイン! 無事だったのか!」

「全裸男は余計だっ!」

そう――彼はミストの村で、一糸纏わぬ姿のまま行方の知れなくなっていた僕の親友・カインだ。

「第一あれは嫌がる俺を戦闘不能にした後に追いはぎのように引っ剥がしていったんだろうが!」

「僕じゃない! あれはなんというか……こう、大宇宙からの声が僕にそうしろと……」

「都合のいい言葉で責任逃れをするな! だからお前はラディと違って暗黒剣を極められんのだ!」

「何? ……もしかしてカイン、「アフターストーリー」の?」

「仕方ないだろう、俺はあっちの方でもレギュラーなんだ! 二人も雇えん!!」

「え〜……あんな地味な中途半端オリジナルキャラに負けたのがカイン……イメージ崩れるなぁ」

「だが、ヒロインはどう考えてもアフターストーリーの方がいい女だぞ間違い無く!」

「その「だめな方のヒロイン」に恋心を抱いて寝返った人間がいう台詞じゃないだろ!!」

「そんなもの設定の中での話だ! 設定が無ければ誰があんなストーカー女に恋するかッ!!」

 

 

「お前は知ってるか!? あの俺やラディの絵を描いた絵師様のサイトの日記に描かれていたローザを!

 鼻血だぞ鼻血!! どれだけ俺の心が萎えていったか……お前には判るまい!」

「判るさ! ああ判る!! 僕だってアニメーション見たし!」

「俺ははっきり言ってもうローザに関わるのは嫌だ! お前に譲る、好きにしろ!」

「そんなの僕だって頼まれたってイヤ――」

 

――ぴっ

とととととととととととととと。

 

「いいからさっさと戦いなさい……いいわね、セシル、カイン?」

「うっ……」

「は、はい……」

 

「ふむ……弟も、なかなか苦労しているな……しかし、あんな女を奪うのか……むしろ弟は喜びそうだがな」

 

 

 

 

第七話 虜囚

 

こんばんは――いえ、初めましてというべきかしら。

私の名はローザ――バロン王国軍白魔道士団所属の白魔道士。

でも今は、愛しい人を追って国を出た……ただの一人の、女――

けれど今、私のそばには愛しいあの人――セシルはいない。

ファブールに敵として表れたカイン――そして黒い甲冑に身を包んだ魔道士ゴルベーザ。

私たちは敗れて――クリスタルは奪われて。

そして、私もまた囚われの身となってここ・ゾットの塔に幽閉されてしまった。

何故、クリスタルを奪ったの――

何故、罪も無い多くの人を犠牲にしたの――

何故、親友のはずのセシルに刃を向けたの――

カインは何も答えてくれない。

こんなに近いのに――彼の心は、どこか遠いところにあるかのように。

彼の表情はどこか虚ろで、心ここにあらずといった様子。

……それは、あのゴルベーザという男に彼が操られているから。

そして心を失ったカインとゴルベーザはまるで、忠実な犬とその主人のような様子で、

最後のクリスタルである、トロイアの土のクリスタルを奪う算段を――

「――チェックメイト、だ」

「く……ゴルベーザ、その手待った」

「駄目だ。お前はもう3回待ったを使っただろう」

「そこを何とか」

「ならん」

「くっ……この程度で、俺を止められると思うな――!」

「ほう……この盤上、ここから覆すと……いうのか?」

「フッ……俺を誰だと思っている。俺の名は、カイン・ハイウインドだ――!!」

「って、先刻から何をやってるのよっ!」

私の全力の怒号に――カインとゴルベーザは一瞬、互いに顔を見合わせて――

「何……といわれても。見てのとおり、チェスだが」

「上達したいというから、私が指南をしているのだが」

「……そういうことじゃなくって……」

真顔で答えてくる二人に――私は限りなく脱力すると、気を取り直して。

「そうじゃないでしょ!? この場面はこう、ゴルベーザの見えない真意と恐怖を伝えつつ、

 カインの心さえ簡単に掌握するその実力! そこで悪役としての格の違いを見せ付けたりしながら、

 こう紫とかの怪しい光源で怪しげな会話をしつつ怪しげに音楽鳴らしたりしてとにかく怪しく!」

「と、言われてもな……」

「うむ。あの当時も今も、本人の意識としては自然に振舞っていたわけであるし――」

「もう……いい。私が悪かったわ……」

私はぐったりと脱力して――拘束されているふりを止め、嘆息した。

そう――私は拘束さえされてはいない。

なぜならこの塔――そもそも出口が無い以上、脱走しようが無いのだから――

「なら……ちょっとセシルたちの様子、見せてくれないかしら?

 私が囚われた直後のセシルの行動って、全然知らなかったし……興味あるわ」

 

 

リディア……こんなことを頼むのは、僕もとても心が痛い。

 けれど、僕は頼まなくてはいけないんだ……だから……」

「お兄ちゃん……? そんなに改まらなくても……リディア、聞けるお願いなら聞いてあげるよ?」

「そうかい!? なら早速、船に乗る前に着ているものを全部脱いで――」

「連射」

 

「……ゲームが違う気がするが……確かロマンシングサガ3だったか?」

「弓レベル……40以上……鬼だな」

 

「セシル殿! 大丈夫か!?」

「そ、空から沢山矢が降ってきたって思ったら、全部セシルお兄ちゃんに――」

 

「しかも当たっているぞ……ここから」

「やはりセシルの彼女をつとめるだけのことはある……」

 

 

 

 

第八話 孤独

 

……やあ。

僕の名はセシル。暗黒騎士だ。

 

そして僕は今、たった一人で、ここにいる――

 

バロンへの侵入経路――僕の『比較的海兵隊はバロン軍でも手薄な方』との言葉に、

僕たちは一路船でファブールからバロンへ侵入を果たす……はずだった。

だが、そんな僕たちを突如襲った怒れる海の主・リバイアサン。

絶対的で圧倒的な力の前に、僕たちは無力で。

 

そして――僕達は完全にはぐれてしまった。

 

みんなから最後に剥いでおいた大量の武具だけを残して。

 

……なにより、僕が助かった以上、正直ヤンがあの程度で死ぬとは思えないし、

どこぞのカエルなんぞはまあ生きていようが死んでいようがかなりどうでもいいのだが

リディアがいない――それがなにより痛い。痛すぎる。

これじゃ何のためのFF主人公なのか。

どこぞの似非究極地味主人公は、外見年齢永遠の13歳とか言うおいしいキャラと旅しているのに。

この待遇は一体何なのか。

そもそも何故「投票企画第一回 キャラクター人気投票」で僕に一票も入っていないんだ

多分それはこの連載が始まっていなかったからで、

今あの企画を開始したら勿論あんな地味主人公引き倒してぶっちぎりの一位は確実だろうけど

だって僕はセシルだよ? かの超大作「FF4」の主人公だよ?

声だって『関 智一』だよ? ガングレイブの主人公だよ? 負けるわけがないよな。

っていうかどっちに投票すべきか判ってるよなお前ら。

今の企画でもなぜか質問ないけど、それは不人気じゃないと証明出来るよな?

 

………………。

誰も突っ込みを入れてくれない……それが孤独感をいっそう、強める。

何だかんだ言っても、やはり……一人には変わりない、か……。

 

 

 

 

……ん?

……待てよ?

よく考えてみたら……確か、ここはミシディア。

そして、ここからの展開、だと……次に仲間になるのは――

「……おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」

そうだ――なんでこんな簡単なことを忘れていたのか。

次に仲間になるのは――ミシディアきっての双子の天才魔道士。

そしてスクウェアきっての最年少仲間――ポロム&その他1じゃないか!

ポロムといえばなんとその年齢5歳! リディアの7歳よりさらに幼い!!

ああっ……そうか、僕としたことがすっかりそんな重大なことを忘れていた!

「僕は……一人じゃないんだ……ハハ、ハハハ、ハハハハハハハハハハハハヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

 

「ちょ、長老……あそこで哄笑してるお方、怖いですわ……」

「む……な、なんということだ……普通人は誰でも、その内に輝きを秘めているというのに……。

 一点の曇り無き(