No.03-EX02 Alfail story Episode Penetrater
双隻眼のアトリ・イスカ

第二十九話 sword dance(後編)

人の頭よりも巨大な瓦礫が降り注ぐ中で、月明かりに僅かに輝きを返す刃。
身を捻って紙一重、その斬撃を躱した時――深々と地面に突き立った刃に床が揺らいだ。
しっかりと地面に突き刺さった刀身が、ユキの動きに停滞を生じさせる――そこへ向けて叩き込むのは、鉄骨で補強したブーツの爪先。
全力で蹴れば建物の壁に穴を開けられるほどの破壊力を秘めた回し蹴りを、だがユキは、軽く片手を掲げただけで受け止めてみせる。
アトリは己の迂闊さに、思わず舌打ちを漏らした。
体格の差からくる弾き飛ばしを狙っての一撃だったのだが――彼女は戦闘用の自動人形。
その小柄な外見とは裏腹、現在の彼女の『重量』は大の大人数人分に匹敵する。
如何に体重が乗った蹴りとはいえ、体を使って戦ったところで――圧倒的な重量差を誇るユキに通用するはずが無かった。
急ぎ蹴り足を戻そうとするが、それよりもユキが足首を掴み取る行為の方が一瞬早い。
繊手閃き――彼女の石剣よりも軽いアトリの体は勢いよく壁に叩きつけられ、木っ端微塵に壁を破壊し、隣の部屋へと転がっていく。
それはこの家が新築の木造であったからであり、昔からの日干し煉瓦の家だったならば――砕けたのはアトリの脊髄だったに違いない。
慌てて跳ね起きた彼の体に纏わりついたのは、冷たく輝く純白のシーツ――転がり込んだ先は寝室だったようだ。
「照準補正――角度、修正」
処刑人の宣告よりも冷たい死の確認が、流れにのって刃を運ぶ。
体勢を立て直すも、銃撃では彼女を止めることは出来ない――咄嗟にシーツを掴み取り、視界を遮るようにして宙に展開する。
二周りは体格差のあるアトリを容易く投げ飛ばした彼女からすれば、それはあまりに粗末な抵抗。
手にした剣で薙ぎ払えば、一瞬で無に返すことの出来る行為。
だがそれは、双隻眼も予測の範囲に入れているはず――こちらが刃を返し、二の太刀を見舞う前に銃撃を叩き込むつもりなのだろう。
状況判断からの選択は一瞬。
彼女は斬撃の形から刃を掴む手を捻り、アトリへと向けて矢の様な刺突を見舞う。
これならば、シーツを退ける一手を省略して直接双隻眼を狙える上に、彼からはこの攻撃の前触れを見ることは出来ない。
確定した勝利の一手。
だが実際に見舞った一撃に、骨を絶つ手応えは無かった。
「状況を利用した最善の一撃を見舞うのが、お前達自動人形の癖だ」
呟くアトリの頬から、一筋の紅がうっすらと流れる。
窓から差し込む月の光に、銀の瞳が冷たく冴えて。
「お前もそうだが――選択が、早すぎたな」
シーツ越し――ユキの腹部へと押し付けた銃の銃爪を、躊躇う事無く引き絞った。
連続する銃撃が、くの字に彼女の体を折り曲げ、衝撃でそのまま吹き飛ばす。
先刻のアトリとはまるきり逆に宙を舞った小柄な体は、さながら砲弾の様な勢いで壁に激突して穴を開けた。
この好奇を逃がす道理は無く、そのまま畳み掛けるように、相棒の重い感触と共に突貫するアトリ。
一方、吹き飛ばされたユキの方も――自身の上に積もっていた瓦礫を跳ね飛ばして石剣を構え、果敢にも自ら打って出てきた。
こちらの足を止めるために薙ぎ払われた刃をバックステップで躱すと同時、牽制を兼ねて銃爪を引く。
しかし、アトリはそこで――予想外の光景を目にすることとなった。
薙ぎ払われた刃が、遅い。
それだけではない――牽制に放った銃撃を受け止めもせず、弾丸は彼女の肩へと直撃したのである。
確かに弾丸を少々貰ったところで、彼女にとっては大したダメージにはならない。
しかしこれは牽制だから無視したというものではなく、今の銃撃に対し、彼女が反応できなかったためだった。
少女の動きは、明らかに鈍っていた。
叩き込んだ弾丸の合計数は9発。そのうち4発が、彼女の腹部の一箇所へと寸分違わず集中している。
銃弾が体を貫通することは無かったものの、衝撃は体を貫き、内部に何らかの異常を発生させたらしい。
残りは剣で遮られていたものの、余裕が無かったのだろう――全てを同じ箇所で受け止めたため、刃の破損の度合いも酷いものだった。
だが、とても万全とはいえない状態で、なお少女はその手に握る刃を手放さない。
肩に担ぐようにして剣を構えるなり、そのまま愚直なほど――真っ直ぐに、突撃してきた。
放つ斬撃の形は判っている。
機能が低下した今でも、刃自身の重量の補助で鋭い一撃を見舞うことが出来る唯一の攻撃手段――振り下ろしの一撃。
だが、その後の事は考えぬとばかりに二の太刀を捨てたその一閃は、今までの全ての斬撃を鑑みても、最も鋭く、重く。
それでも、紙一重。
刃はアトリの体を掠める事無く、空しく床へ突き刺さった。
返すように見舞われた銃撃の連続を前に、ユキは跳躍して致命打を避けるものの――その全てを躱すには至らない。
さらには、ここに来て初めて、彼女は自分の獲物である石の大剣を手放している。
ここに来て、均衡は崩された。
「これで終わりだ――壊れろ、人形」
完全にその機能を停止させるべく、全ての弾丸を叩き込まんと銃口を跳ね上げるアトリに対して。
「――否。この程度の障害であれば、任務遂行に支障無し――攻撃」
彼の銃よりも熱の無い言葉と共にユキの手が閃き、そこから一条の閃光が迸った。
その次の瞬間――強い力に引っ張られ、銃を握った左腕がひとりでに壁に叩きつけられ、固定される。
「何……!?」
左右非対称な、彼の服――長く袖口の広い左袖を壁へと縫い止めた閃光の正体は、一本の果刀だった。
どう見ても殺傷を目的とした刃ではないことから、予め持っていたものではなく、恐らくこの部屋で調達したものなのだろう。
ただ――どれほどの力で投擲されたのか、刃は根元まで壁にしっかりと食い込み、木で作られた柄は粉々に爆ぜている。
これでは、引き抜くことは不可能。
それに気づいた時――思わず、苦い舌打ちが漏れた。
「……方式の破損部分を削除。予備記録より該当項目部分を読込――」
アトリの着ている服もまた、ユキの服装と同じく――素材自体が高い防刃・防弾能力を備えている。
それは即ち、刃を突き立てられた彼の左袖は――力づくで引き千切り、拘束を解くという対処が取れないという事だ。
「感覚の復元を完了。任務継続に支障無し」
片腕を拘束されたアトリを前に、不調を解消したユキは――床から軽々と大剣を引き抜いて。
「――引き続き、敵性体との戦闘を続行する」
容赦の無い一言と共に、縫いとめられた銀へと蒼が迫った。
「……っ……痛ぅっ……」
じんじんと、一定のリズムで頭の中を浸すような痛み。
眼の端に涙を浮かべながら、ゆっくりと記者は瞼を上げた。
どうやら吹き飛ばされた際、積み上げられていた建材の山へと激突してそのまま気を失っていたらしい。
職業病か、意識が覚醒するよりも早く、自分自身の体に異常は無いかを確認し――骨折などのような重傷は負っていないことに安堵する。
唯一、はっきりと痛む後頭部にもそっと手を回すが――こぶになっているものの、出血はしていないようだ。
「……っても、脳の血管が傷ついてたら全然無事じゃないよな……」
自分の状況を、少し皮肉げにこき下ろす――そんなことが喋れる程度には、意識がしっかりと戻ってきていた。
叩きつけられた衝撃に全身の反応が少し鈍いが、軽く息を吐いて気合を入れ、一息に体を起こして立ち上がる。
そして――その時ようやく、自分の体の次に大事なものの存在に思い至った。
「……!? そうだ、写真機は何処に行った――!?」
共に特ダネを追う相棒の姿が何処にも無い。
慌てて視線を巡らせたところで、顕在の山から少し離れた場所に転がっているのを見つけた。
あの様子からすれば、自分と同様――相当な勢いで地面へと激突したに違いない。
一抹の不安と共に、そっと拾い上げて――相棒の姿に、思わず溜息を漏らさずにはいられなかった。
「おいおい……まだコイツ、月賦払い終わってないんだぞ……?」
地面に叩きつけられた写真機は、レンズの部分に見事なまでの大きな皹が入っていた。
ばらばらに分解しなかっただけまだマシだが、これでは修理するまで、とても撮影に堪える一枚は取れそうもない。
頭の中で支出を計算しながら、がっくりと肩を落として。
「……でもまあ、文句が言える状況でも無いか。命があっただけでも僥倖だよな……」
とはいえ、決して写真機の破損と、それに伴う修理の費用は痛くないわけではない。
決して痛くないわけではないのだが――あの瞬間、僅かに死を覚悟したのも事実だった。
この生き方を選んだ時から、ある程度その部分に関して覚悟した部分はある。
だがそれでも、家を飛び出し、根無し草になったあの頃とは違い。
今は、絶対に死ねない理由がある。
「……この特ダネも……潮時か……?」
呟いた言葉は、驚くほどに冷静。
仲間内からは『無鉄砲』などという不名誉な綽名をつけられているものの、彼は決して命の投げ売りはしない。
ただ、他人よりも生死の境界線――そこに漂う『匂い』を敏感に感じ取ることが出来るために、その境まで足を踏み入れることが多いだけである。
危険な取材先で常にぎりぎりのところまで粘り、その甲斐あって、若い身空で数々の特ダネを掴み取ってきていたのだが。
今回のネタは、そういった意味では既に『境界線を跨いで』しまっていた。
今、命がある事を確かめられるのは、単に偶然と幸運が重なった延長線上の事に過ぎない。
(日頃の行い……だったら、間違いなくホトケだったな。……あいつの徳でも流れてきたか?)
そんな冗談じみたことを考えながらも、頭の片隅では、この一連の騒動からの撤退について考えている。
否――考える必要など、何処にもないはず。
命を投げ売りする気が無いなら、結界の外へと、一秒でも早く逃げ出すべきである。
だというのに。
目の前で命の火花を散らし、戦っていた双隻眼の姿が。
そんな彼に、無類の信頼を寄せていた黒髪の女性の笑顔が――頭から、離れない。
(……!! ダメだダメだ――何考えてるんだ、オレは)
死地に立つ取材対象に、必要以上の感情をかければ――待っているのは自分の死だけ。
彼らと自分は、別の世界に生きる者なのだ。
それに、言ってたではないか――黒髪の女性は「勝てる」と。
ならばこれ以上ここに留まっていることは、彼らの足を引っ張りこそすれ、役に立つことなどはない――
後ろ髪を引かれるような思いを無理矢理振り切り、ここから一番近い結界の境界へと足を向ける。
すぐ傍の建物から、轟音と共に何かが路地へと吹き飛ばされたのはその時だった。
縫いとめられたアトリに対し、ユキが見舞ったのは大剣による斬撃ではなく――掌底からの一打だった。
杭の様なその衝撃は彼の体の内を貫き、背後の壁を撃ち砕いてアトリの体を路地へと投げ出す。
地面へと投げ出されて惨めに横転する体は、首から下の感覚が殆ど無く、彼の言う事を聞こうともしない。
どうやら内臓が傷ついたらしく――普通の痛みとは明らかに異なる激痛に苛まれながらも、それを気力だけで捻じ伏せて。
かろうじて自由の利いた腕で、すぐ傍に転がる黒い相棒へと手を伸ばそうとして――
「――無駄だ、ペネトレイター『双隻眼』」
硬い呟きと共に、鋭く走った爪先が――彼の銃を蹴り飛ばした。
手の届かない場所まで滑っていく相棒を、ただ見やる事しか出来ないアトリに――少女は巨大な刃を掲げる。
月を背にして、死の使いよりも冷たい瞳で――ユキは足元に倒れる『敵性体』を見下ろして。
「……私の任務は『アルフェイル』の回収であり、『双隻眼』の排除は最優先事項には含まれていない。
従って、一度だけ貴様に通告する――今すぐこちらに『アルフェイル』を渡せば、これ以上の戦闘行為は行なわない」
それは、少女の最終通牒。
一度だけ与えられた――彼の、選択肢。
不審な動きをした瞬間、いつでも両断できる体勢のまま――刃を構えた少女に対して。
アトリはゆっくり、力の入らないその身を起こし――立ち上がって。
口元を微かに吊り上げ、選択を告げた。
「――断る。お前は壊すと言ったはずだ」
――最速の挙動で、腰へと滑る手。
だれそれよりも早く――巨大な刃が振り下ろされた。
路地へと吹き飛ばされたのは――銀色の髪をしたペネトレイター。
吹き飛ばされた様子、すぐには起き上がらない彼の姿から、重い一撃をその身に負ったのが判る。
そして彼を追うようにして、建物から姿を現したのは――巨大な剣を構えた、エプロンドレスの殺戮人形。
双隻眼のすぐ傍に転がっていた拳銃を蹴り飛ばして、彼から戦う術を奪い――ゆっくりと、冗談じみた大きさの刃を振り上げていく。
――駄目だ。
――彼は、殺される。
如何に様々な逸話を残し、あらゆる危険から生き延びてきた伝説のペネトレイターであっても。
この状況を打破し、生き延びる事など――何をどうしても、出来るはずがない。
数秒後には、彼の首は宙を舞い――双隻眼は生きた伝説から、歴史の中の存在へとその姿を変えるだろう。
それは、特ダネかもしれない。
人の意識は、これ以上無いほど惹かれるだろう。
だが――そんなものを書くために、自分は記者になったわけじゃない。
だが、だからといって自分に何が出来る?
お世辞にも、魔術の腕は標準――それもかなり不器用な方で、“7”の階位にも何とかぎりぎり上がることが出来た程度。
せめて、あの黒髪の女性であれば。
同じ階位であっても、あの魔術師には――自分と違う『何か』がある。
双隻眼と道を同じくし、彼を手助けするだけの『何か』が。
自分には、それに匹敵するほどのものがあるだろうか?
――あるはずがない。
彼の目の前に飛び出し、立ち塞がったところで――二人まとめて両断されるのがオチだ。
この件からは手を引く。
そう決めた。
先刻――自分で決断したことだ。
ならば、その選択肢を貫くのが、筋というもの。
そして、彼は走り出す。
――双隻眼の、元へと。
(――っくしょおおおおおおおおっ!!)
きっと頭が、どうかしている。
途方も無く、どうしようもなく馬鹿げた行為。
頭の中では警鐘は成りっぱなしで、気の早い記憶は頭の中で走馬灯を回転させている――だが。
(それが―― 一体何だってんだ!!)
自分が馬鹿なのは、誰よりも自分が判りきっていること。
何を言われたところで、動き出したら止まらないことも。
このまま、人を見殺しにして。
――自分は、自分の死ねない理由と。
――『彼女』の笑顔と向かい合うことなんて、出来そうもない。
(一生に一度ッくらい、格好つけんのも悪くないだろ――っ!!)
自分はこんな立ち回りじゃない。
もっと弱く、流されやすく――何処にでもいるような、当たり前の『弱者』。
それでも。
走る。
走る。
息を切らし、悲鳴を上げる体を無視し、ゆっくりと立ち上がる双隻眼の背後まで走る。
同時に、ありったけの集中力を総動員して――識り込む世界。
失敗は許されない。
今の自分に出来る、たった一つの魔術のために。
残っている魔力量を、全て注ぎ込んで――
「――伏せろおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!」
その叫びは、腰に手を滑らせたアトリにも、刃を振り下ろすユキにも届いていた。
だが、叫びを認識したその瞬間。
それが何なのか把握もせず、膝を折った人間と。
その叫びを意に介さず、刃を振り下ろした自動人形。
研ぎ澄まされた本能と、緻密に編み上げられた論理の導いた――二つの『選択』が。
その後の運命を、二分した。
何事かを叫び、両手をこちらへと翳す魔術師。
何かの構成を展開しているが、さして警戒を払うようなものではない。
それよりも今は、目の前の双隻眼の確実な始末。
それを終えた後、次の排除対象は彼にしよう――そんな事を思いながら、ユキは刃を振り下ろし。
瞬間、世界が白く蒸発した。
「――!?」
理解不能。
何が起こったのか把握できない。
演算中枢が、叩き込まれた莫大な情報を処理しきれず、凍結してしまっている――
刃を振り下ろす手は奇妙な形で停止し、情報の混乱に誤動作が連続した。
記者が放った魔術は、既存の構成に自分なりのアレンジを施したものだが、大元となった魔術はそう難しいものではない。
何も無いところに光源を作り、光を灯すという――階位“9”の頃からでも使うことの出来る、初級中の初級の魔術。
だが、本来なら恒久的に一定の灯りを持続させるだけのこの魔術を、彼は自分の持つ唯一の才能を元に、独自の魔術へと変化させた。
記者の魔術師としての才能は、お世辞にも高いものではなかったが、ただ一つ、人に誇っても問題の無い天賦の才を持っていた。
それは、魔術を構成する『五元素』の中でも、地水火風の四つを統括する元素――『雷』への高い適正である。
彼が、自身の魔力量を『バッテリー』と呼ぶのも、元はここに起因している。
五元素を用いて成す魔術は、どの元素を用いても似た効果を再現することが出来るが――性質は各元素によって大きく異なっている。
加えた魔力量に比例して、その輝きの強さを増す――雷元素の光明の魔術の属性を把握した彼は、その構成に手を加えた。
本来ならば一定までの魔力しか流せないこの魔術に、際限なく魔力を注ぎ込み、その輝きを増す事が出来るよう改変したのである。
その代わり、光の寿命は極端に低下する欠点があるものの、それは特に問題にならない。
彼がこの魔術を編み出したのは、暗所で写真機のシャッターを切る時――撮影対象をはっきりと取るための強い光が欲しかったため。
また、暴漢に絡まれた時、遁走するための牽制に使うなど――彼が記者として生き抜くため、充分に役立ってくれている。
それでも普通なら、『失敗作』の烙印を押されるような魔術。
だからこそ、少女はその魔術が任務続行に何の支障も来さないと判断して。
残っていた魔力量全てを注ぎ込んだ、演算中枢が麻痺するほどの圧倒的な光の前に――視界と論理思考を焼かれたのである。
視界を奪われれたのは、アトリも同じ。
背を向け、反射的に目を閉じてなお、強い輝きは瞼の奥を白く焼き、視力を奪う。
だが視界を失おうと、彼が行なう挙動に――目など必要無かった。
奇妙な体勢で硬直する少女へ向け、腰から引き抜き構えたのは――鈍く輝く榴弾投擲砲。
「取って置きの一発だ―― 冥土の土産に持って行け」
銃爪にかけた指に力が込められ。
緋色の閃光と衝撃が一帯を薙ぎ払い、炎熱が大気を焼き払った。



