Final Fantasy W After Story

第三話 霧の洞窟

ラディのチョコボがミストの洞窟前に来た時には、もう陽光は天に最後の紅い火を投げ掛けているところであった。
「よしよし……頑張ったな」
軽くチョコボの頭をなでてやる。
くすぐったそうにチョコボは目を細めると、一声鳴いて森へと帰っていった。
それを見やってから、改めてラディは洞窟に向き直る。
ミストの洞窟。年中深い霧で包まれている洞窟で、ここ以外にはミストへの通行手段は確立されていない。
――まあ高い運賃を払い飛空挺でバロンからカイポに飛ぶのも一つの手ではあるが……その場合はミストを通り過ぎてしまう。
しかしまあ、以前はモンスターもひしめき、霧の幻獣の噂も名高い難所であったこの洞窟も、
今では行商の関係上きちんと整備され、5年前とは比べようもないほど通行が楽になっているのだが……。
(どちらにしろ早く抜けないと……宿が取れないな)
ラディは即決し、足を踏み入れた。
内部はさすが霧の名を冠するだけあり、濃い霧は白い闇を思わせるほど視界を狭める。
――しかし最近では洞窟の通行の目印として、各所に魔法を利用した光が設置されていて、
その光を順序どおり辿っていけば子供でも抜けられるようになっている。
転落を防ぐために柵も設置されていて、もはや殆ど観光地のようなものだ。
それでもたまにモンスターは現れる。
しかしラディの腕にかかれば稽古のわら人形同様、一刀の元に切り伏せられていった。
白い闇を切り裂くように、黒い弧が宙を舞う――
ラディは前にも記したように暗黒騎士ではない。
それなのに何故、彼は暗黒剣を携えているのか――
彼の持つ暗黒剣「テュルフング」は元々はレオンの持つ暗黒剣であった。
――ただしレオンが存命中、使用していた時はまだそんな銘は無く、バロンで量産・支給される何の変哲もない暗黒の剣であった。
真の剣豪は剣を選ばないというが、レオンはまさにそれだったのかも知れない。
しかし、彼が床に伏せった最期の時。
自らに残された時間を悟った彼はラディに頼んで愛用のそれを持ってこさせた。
「父さん……?」
「……見ておけラディ。暗黒騎士は……命を力に換える。
そして……力は後に残されたものに……こう継がれるのだ……!」
そしてラディは見た。
父の僅かに輝く命の輝きが、彼の手にする暗黒剣へと吸い上げられていくその様を――
自らの命を衝撃波に換える「暗黒」のように、暗黒騎士は自らの命の力を暗黒剣に送り、その剣に力を与える。
その時初めて暗黒剣は銘を授かり、この世でたった一本の剣となるのだ。
その翌日、レオンはこの世を去る。
ラディはその剣を筆頭武具全てをセシルを通じて暗黒騎士団の団長へと返却した。
無論彼の武具は他の暗黒騎士が使用することとなる。
負の力で鍛えられた武具はそうそう数があるわけで無いため、こうやって回して使うことが多いのである。
そして彼の武具は他の暗黒騎士が使うこととなった。
しかし――前述のレオンの剣は、他の暗黒騎士には鞘から剣を抜くことが出来なかった。
まるで魔術的封印が施されたかのように、他の者に扱われることを拒絶したのである。
あれほどの使い手であるレオンが遺した暗黒剣、その切れ味は想像するに難くない――
セシルも含め、何人もの暗黒騎士が試してみたが、その刀身が日の目を見ることはなかった。
使えない剣は破棄するしかない。
負で鍛えられた武具である以上、それは尚更の事であろう。
――が、やはりそこでもレオンの剣ということが作用したのだろう。
どうしても破棄できず、協議の結果、騎士団の隊長が、年々交代で剣を保管するという形でこの話は決着を見る。
そしてセシルは程なく暗黒騎士団の隊長となったのだが、この時にセシルはテュルフングを紛失してしまう――というのが、公式の見解。
しかし真実は、セシルはこの剣を当時陸兵団の新兵だったラディに返してしまったのだ。
――この剣は、君が持つべき物なのだから――と。
本来なら厳重に管理すべき負の力を内包した武具を、ぱっと出の新兵に渡す。
こんなことがばれれば無論セシルは厳重な罰を受けるのに、セシルはその危険を犯してまでこの剣を返してくれたのだ。
父の遺品であるこの剣を。
その剣は、ラディの手により日の目を見る。
彼が暗黒剣を抜けるほどには負の力に耐性があったのは偶然だろうが、
この剣が彼にだけ抜くことが出来たのは必然とは言えなくなかろうか――?
正直この剣を扱いきれているとは、残念ながらラディは思わない。
まだまだ自分は剣に「使われて」いるだろう。
この剣を「使いこなす」ほどに自らの腕が到達した時。
その時初めて、自分は父と同じところに立てるのではないか――彼はそう思っている。
……早足で駆けながら、彼は光を目印に快調に進んでいった。もうミストの洞窟も終わりに近い。
出口を示す光を目指し、彼が駆け出した――まさにその時だった。
「!?」
光が何かに遮られる。
慌ててブレーキを掛け、彼は立ち止まった。
相変わらず霧で辺りは見えないものの、出口を遮った「何か」の尋常ならざる気配は痛いほどに感じていた。
(……確か昔、出口にはミストを守る霧の竜がいたが――)
その竜はセシル達によって屠られ、今ではそんな話はまったく聞いたことがない。
……第一この禍々しい気配は、守護する者にしてはあまりに強烈過ぎる殺気を漂わせている。
彼は音を立てずにテュルフングを抜いた。
それを右手に構え、空いた左手に短剣を携える。
長・短剣での二刀流は、彼が陸兵団で決して破られることのなかった戦闘方法である。
意識を前方に集中させ、神経を研ぎ澄ませ――
(来る!!)
霧が揺らいだ瞬間、ラディは後方へと飛んだ。
一瞬の間を置き、寸前彼がいた場所に強烈な一撃が叩き込まれる。
地面が爆ぜ割れるほどの苛烈な一撃は周囲の霧を一時的に晴らし、襲撃者の姿を顕わにした。
そして――ラディは相手の正体に愕然となった。
「ド……ドラゴン!?」
――凶々しいほどに漆黒の色で構成されたドラゴンが、そこにいた。

【座談会】
ラディ:ああ……また喋ってない……。
作者 :……前々から思うんだが、お前一人だろ?
それで台詞だらけだったらはっきり言って驚くというか、引くんだが。
ラディ:それはお前がオレを一人で旅立たせたからだろうがッ!!
FFで、今まで一度でもOPからずっと一人だった主人公があるか!?
作者 :ま、まあそれはそうだが……。
ラディ:ああ〜……。仲間が欲しい……。
作者 :う〜む……これは重症だな……。
ラディ:ところで一つ疑問なんだが。
オレのテュルフング、最初の武器にしてはやたら強くないか?
作者 :まあな。設定では攻撃力155となってるし――
ラディ:ブッ!? ひゃ、155!? エクスカリバー並じゃないのかそれは!?
作者 :うむ。正確にはエクスカリバーより5低いが。
元となった「暗黒の剣」が攻撃力10だったから……
レオンの生命力がいかに凄まじかったかがよく判るな。
ラディ:まあ、父さんは「暗黒」で要塞をフッ飛ばせたくらいだからなぁ……。
作者 :とても半死人だったとは思えんな(汗)。
ちなみに短剣の方は銘が未設定だが、攻撃力は56を想定している。
ラディ:それでもムラサメクラスの威力か……。二刀流で戦う点といい、
なんだか最初から攻撃力がカンストしてるような気がとてもするんだが……。
作者 :その点、防御力が尋常じゃなく低いだろう?
……まあ殆ど短剣で裁くから意味が無いといえば無いが。
というか前にも言ったとおり、それでもスリルを味わえるバランスで仕上げてあるから安心しろ。
ラディ:むぅ……喜ぶべきなのかそうでないのか……。あ、あと一つ聞きたいんだが。
作者 :……個人情報じゃないなら答えられるが?
ラディ:違うよ。……本文読んでて思うんだが、暗黒騎士の設定とか暗黒とか……。
4の公式設定と明らかに違う部分がちらほらと見受けられるが……。
「暗黒」は本来、剣に込められた負の力に、
自身の生命力をぶつけて負の力を引きずり出して放つものだし、剣の銘うんぬんの設定なんかも――
作者 :ああ、今日も星がきれいだなぁ。
ラディ:この湿度80パーセント突破した曇天の空が?
作者 :ああもう! 仕方ないだろ!? 公式設定資料集手に入れたのはつい最近なんだ!
その前にこの話のプロットを完成させたんだから、
今からその点を変えると話の整合性が付かなくなるんだよ! だから――
ラディ:お前……本当に馬鹿だな。
作者 :何っ!?
ラディ:そういう時は「この設定はオリジナルです」といえばいいんじゃ無いのか?
作者 :……あ、そうか。その手があったか。
ラディ:あのなぁ……。ああ、もうダメだ。全身脱力感でやる気が……。
作者 :なら程よくだるまったところで今回はお開きと行こうか。
ラディ:うう……。次の本編掲載までには、シャキっと戻りたい……。



