鐘が、鳴り響く。
ステンドグラスから光が差す神秘的な教会の中、皆正装で新婦を待っていた。
祭壇の前には牧師と新郎であるじゅん、みさきに薦められてベストマンになったマスターが立っていた。
ブライズメイドには、夜姫、月夜(白)、ミスト。アッシャー達の中にはアルの姿もあった。
花嫁の介添え役であるメイドオブオナーは親友であるみさとが務めていた。
タキシードを着た三日月がリングピローに結婚指輪を載せて祭壇まで運ぶ。
バスケットを持った月夜(小)としるぴんがバージンロードに花びらをまき、清めた。
そして、結婚行進曲が流れる。
教会のドアが開き、新婦が入場した。
片足を出して両足を揃える。逆の足を出してもう一度揃える。
父親のエスコートで、ゆっくり、ゆっくりとみさきは進んで行く。
みさきが祭壇の前に立ち、音楽が終わる。
牧師が、結婚式の開始を宣言した。
「人は父母を離れ、その妻と結ばれ、二人の者は一体となるべきである。
彼らはもはや、二人ではなく一体である。だから、神が合わせられたものを人は離してはならない」
そして、牧師が聖書を閉じる。
「この言葉通り、あなた方は二人で一つ。二人で、共に幸せな家庭を築く事を私は願います」
牧師の笑顔は優しく、心から二人を祝福しているようだった。
「それでは、誓約の言葉を……」
「……少し時間、いいですか?」
リハーサルに無いみさきの突然の申し出に牧師は少々驚いたようだが、すぐに優しい笑顔を浮かべた。
「いいですよ。何か、言いたい事があるのでしょう?」
「……ありがとうございます」
みさきは振り返り、皆を見渡した。
「まずは皆さん、もう一度集まってくださってありがとうございます。
この式を挙げるまでに色々ありました。
そんな時励ましてくれたり、手伝ってくれたりした人達がいました」
そこまで言ってみさとの方を向く。
「古くから続く、変わらぬ友情と」
みさとが手を振り、微笑む。
「そして、新しい出会いが生んだ友情に」
アル達も笑顔を浮かべた。
「本当に……感謝してます……
みんな……本当に……ありが……っ……」
「あー、泣くな泣くな。
俺達の新しい門出なんだ。にっこりと笑って迎えるぞ?」
「……うん!」
どこからか拍手が起こる。
その拍手は教会全体に広がった。
「それでは、誓約の言葉を……」
牧師の言葉にみさきとじゅんは頷き、向かい合って両手を握る。
「汝じゅん。その健やかなるときも、病めるときも――」
「あの光……全てを慈しむ『星』の光……
まさか、あれを目にする事が出来ようとはな……」
ここは、『グラ』達の住む世界。
『グラ』は自分の城の玉座に着いていた。
「彼らが紡ぐ物語は、決して悪い方向には進むまい……」
そして、天井を見上げる。
「そしてスラッシュも又、自分の物語を紡ぐ……か」
その時スラッシュは『空間』を越え、『時間』を遡っていた。
『なあ……』
腰に下げたブローチから響く声にスラッシュは返事をした。
「どうしたんだい、アル・フェイル?」
『今から行くのはお前が生まれた世界――そして目的はその世界の「歪み」を取り除く事。
それで間違いはないのだな?』
「そうだよ。今の僕は『可能性』に目覚めている。
アル・フェイルの助力もある。……それに、あの三人のライダーシステムも預かってるしね。
全部の力を合わせれば不可能な話じゃないよ」
『私が聞きたいのはその先だ。
お前はその後どうするつもりだ?』
スラッシュは少し考える仕草をする。
「……そうだね。『歪み』を取り除いた所で『侵食』によって失われた歴史が戻る訳じゃない。
グラ様の所に帰るって道もあるけど……
僕は、少し旅をしてみたいんだ」
『旅?』
「折角時間や空間を行き来できる力に目覚めたんだ。
グラ様との『契約』で命綱もつけてるしね。
色んな時代、色々な世界を見て廻りたい。
それに……」
『それに?』
「……もしかしたらその中に失われた歴史をも再生出来る技術や人がいるかも知れない。
世界は広いんだ。可能性は……ゼロじゃ、無い」
『……スラッシュ』
「今度は何?」
『その旅に、私もつき合わせて貰うぞ』
「……ありがとう、アル・フェイル。
さあ、そろそろ着くよ? 最初の内は忙しいから覚悟を決めておかないとね」
『承知している』
スラッシュとアル・フェイルは時を遡って行く。
その中で、スラッシュは誓う。
『救ってみせる。いつかきっと……必ず……』
教会から出たじゅんとみさきを皆が思い思いの言葉で祝福する。
じゅんが小柄なみさきの体を抱きかかえた。
歓声が上がり、ライスシャワーやバブルシャワーが二人に浴びせられた。
「綺麗ですね……」
「ええ、二人とも本当に幸せそう……」
「ボクも……いつかああいう風に綺麗になれるんでしょうか……」
「ふふっ。きっとなれるわよ、月夜なら。
あ、でもその前に相手を探さないとね。それとももう決めてたりする?」
「ノーコメントです」
「(そわそわ)」
「……月夜様。もしかしなくてもブーケに飛びつこうと考えてますね……」
「うっ……いいじゃない。乙女の憧れなんだから」
「……乙女?」
「おしおき欲しい?」
「ってミストさんも準備してるし……」
「え?! いえ、あの……
……う〜〜、アルさん、意地悪です。
いいじゃないですか。女の人は皆花嫁に憧れるんですから」
『くはぁ?! て、照れた表情が……』
「……まあ、そうらしいですね」
「何でミストさんの時だけ対応が違うのかな、三日月?」
「『乙女』の一言を使わなければそれなりに気の利いた言葉を掛けたのですが」
「帰ったらおしおき決定」
「!!??」
「……と言いたい所だけど。
あの二人の表情を見てたらそんな気も無くなっちゃうね」
「……見てるだけで幸せを分けて貰えそうな位だな」
「みさきお姉ちゃん、嬉しそうだね」
「ああ、そうだな」
「スラ兄ももう少し待ってたらよかったのに……」
「仕方無いだろう。あいつにはあいつの目的があるんだ」
「それが終わったらまた顔を見せに来てくれるかな?」
「……さあ、な」
『「もし大変な事件が起こったら手助けに来ます」……か。
そんな事が起こるのは御免だが、出来るならもう一度会って酒でも飲み交わしたいもんだ……』
「ねえねえパパりん。ブーケ、投げられたよ!」
空を舞ったブーケは頂点で一度止まった。
青天の霹靂にブーケの色が際立つ。
……次に幸せを掴むのは、一体誰なのだろう?
――未来は、悲しい方向だけに繋がっている訳では無い――
――未来の『可能性』は、必ず喜びの道にも繋がっているはずだから――
――彼らは、決してその道を誤ったりはしない――
――優しい心を持っていれば、『世界』はきっと皆を祝福してくれるから――
――人の営みが、物語を紡ぐ――
――二人は、これからどのような物語を紡ぐのだろう――
――今は只、二人に心からの祝福を――





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