「先日、謎の傷害事件が同時多発し怪我人が多数出ました。
幸いにも死亡者や重傷者はいませんでしたが、被害者は百人近くに昇っています。
被害者達は皆『化け物に襲われた』というように錯乱状態に陥っており、現在警察が詳しい調査を行っています。
……では、次のニュースです――」
魔法少女まじかる☆へぷーVS仮面ライダー169(アルキュン)
〜CROSSED TALES〜

第二話

マスターは嘆息しながら店のテレビの電源を切った。
そこにはアル、三日月、月夜、そしてミストが集っている。
四人とも昨日クリーチャーの襲撃を受けていた。
「『事件』は終わっていなかった……って事だ。残念な事にな」
マスターが四人に向かってそう言った。
「ああ、オレもマスターの到着が遅れてたらやばかったな」
「……ボクも三日月の魔術が無かったら危なかったと思う」
「緊急時の為に魔術の腕を磨いていたのですが……その腕を揮う機会は訪れて欲しくありませんでしたね……」
アルはミストに顔を向けた。
「ミストさん、あのクリーチャー達に心当たりは?
ミストさんが復活したのならゲディヒト達や『王』が同じように復活していたという事も考えられる。
そしてまた二年前と同じ事を繰り返そうとしている、とか……」
「いいえ、あのタイプのクリーチャーには見覚えがありませんし……
そして何よりもクリーチャー達に行動させる時の『結界』は私達が使っていた物とは術の系統が違うみたいでした」
「『王』の復活って線は無しか……となると新しい敵って事だな」
アルの言葉に三日月が頷く。
「おそらくそうでしょうね。『王』達は出来る限り秘密裏に事を進めていました。こんな大胆な方法を取るとは考え難い物があります。
どちらにしても……また、戦わなくてはならないのですね……」
「……そう言えばマスター、ボクや三日月のライダーシステムは……」
「すまん、まだ修理中だ。アルのは……あの戦いの後の騒動があったからひとまず修理しておいたがな」
「じゃあ、オレのブラスターは……」
マスターは首を横に振った。
「ブラスターの方もまだ修理中だ。……しかしあれは資料の類が残されていないからな。
俺も出来る限りの事はするが……修理には時間が掛かるぞ」
「とりあえず今は相手の目的等を探る事が先決でしょう。
それに二年前と違って今回は私の主である月夜様や夜姫様の助力を得る事も出来ます。
朝妃さん達は……今向こうの世界に帰省中ですが……」
「大丈夫だ。お姉さまやあっちのボクがいればこんな事件なんかすぐに解決出来るさ」
「……月夜さん、それでも念の為にライダーシステムの修理はしておいた方が宜しいと思いますよ。
これから先、何が起こるか分かりませんからね」
マスターがその言葉に頷いた。
「ミストさんの言う通りだ。安心しろ、急ピッチで修理しておいてやる」
マスターは『本日休店』の看板を表に出しに行った。
その時、169フォンが鳴り響き、全員がその音に反応する。
「クリーチャーだ! 場所は……ここから15キロ、しかも一体じゃないぞ!!」
アルは席を立った。
ミストもそれに続こうとしたが、アルが制止する。
「ミストさんは此処に残っていて下さい。何かあった時に皆を守れる力を持った人は多いほうが良い。
……マスター、残りのライダーシステムの修理を全速力で頼む」
「ああ、分かった」
「気を付けろよ、アル。敵は一体じゃ無いんだろ?」
「大丈夫だ、月夜。ブラスターが無くてもアクセルフォームがある。大抵のクリーチャーには負けたりしない」
「call 169 …standing by…」
「変身!!」
「Complete!」
変身したアルは店を飛び出して行った。
「俺は今からライダーシステムの修理に取り掛かる」
マスターは店の奥に引っ込んで行く。
「……では、私達は此処でアルさんの帰りを待つ事にしましょう」
「大丈夫か? ボク達がここにいたら……」
「万が一マスターが襲われたらライダーシステムを修理する方がいなくなってしまいます。
それに、昨日の件からしても優先的に狙われるのは私達でしょうから。
……そういう事ですよね、三日月さん?」
「ええ、そんな所です」
三人はカウンターの席について其々が注文していた飲み物を口にする。
「……そう言えば月夜さん、少々伺いたい事があるのですけど。
先程『三日月さんの魔術がなかったら危なかった』と言ってましたよね?
……何故その時三日月さんと一緒にいたのですか?」
……
「イ、イエ、タダ散歩中三日月ト偶然出会ッタダケデスヨ?」
「そうですよ、ミストさん。変な深読みはしないデ頂きたく」
『……まあ、月夜さんの男性に対する人見知りが薄れてきているのは良い事ですよね……』
「全身打撲、全治一週間。後遺症の心配とかはとりあえず無いそうだ」
「……よかった、酷い怪我じゃなくて……」
「式は台無しにされたけどな」
「あ……」
確かにそうだった。あの場には二人を祝福してくれる家族や親友、その他にも大勢の人達が来ていたのだ。
『皆に……申し訳ない事になっちゃったな……』
「だからそんなに気にするな。お前が悪い訳じゃない。
それに俺はこの通りぴんぴんしてるんだ。俺とお前が無事なら式なんて何時でも出来る。
何でも抱え込むのはお前の悪い癖だぞ」
じゅんがすかさずフォローを入れる。
「うん、そうだよね。……もっと……ええっと……頼っても……いいんだよね……」
「おう、どんどん頼って来い」
その言葉に安心したみさきは本題を話す事にした。
「……えっと……先輩……」
何か言いたげなみさきの考えをじゅんは悟っていた。
「……また、『正義の味方』として戦うんだろ?」
「……ごめんなさい、私……」
「だから謝るな。お前はお前で出来る事をすれば良い。
俺も俺が出来る事をするだけだ……って言ってもこの状態じゃお前を精神面で支える位しか出来んがな」
みさきはその言葉にゆっくりと首を振る。
「ううん……それが、今は何よりも嬉しい……」
ぶぶぶぶぶぶぶぶっ!!
みさきのポケットの中でアル・フェイルが振動した。
みさきは慌ててカーテンの陰に隠れてアル・フェイルを取り出し、小声で話す。
『せっかく良い雰囲気だったのにっ……また例によって萌えたの!?』
『ち、違う違う奴らが来たから教えただけだだから握り潰そうとする手の力を緩めろっ!!』
『あ……そうだったの、ゴメン』
みさきはカーテンから顔を覗かせた。
「先輩、私……」
「行ってこい。但し無茶はするな」
みさきはコクリ、と頷くと病室から出て行った。
――ちょっと! 院内は走らないで下さい!!
――す、すすすすみませんっ! でも急いでるんでっ!!
アルはシルフィードで公道を走っていた。
クリーチャーの数は複数。急がなければ被害者がまた出てしまう。
しかし、その途中で体長3m程の発光する虎のような形をした物が道を塞いだ。
低く唸り声を上げて威嚇している。
「……こいつもクリーチャーか!?」
『虎』はアルに体当たりをしてきた。
寸前でそれを躱すが、その破壊力は高く、攻撃を受けた建物の壁が砕け散っていた。
『こいつも放ってはおけないな……くそっ、時間が無いってのに!』
アルはシルフィードを解除するとスピアにミッションメモリーをセットした。
「Ready!」
そしてすぐさまにエネルギーチャージを開始する。
「Exceed charge!」
「オオオオオォォォ!!」
スピアのエネルギーが狼を模した冷気となって『虎』に襲い掛かった。
しかしその顎は『虎』を凍結させる事が出来ず、残った力もレジストを受けて振り払われた。
「何っ!?」
振り被った『虎』の爪をスピアで受け止め、慌てて距離を取る。
『……何かのエネルギーで構築されたタイプのクリーチャーって事か?』
もしそうであるのならば相手を凍結させる事を主の目的として放った今の攻撃の効果が薄かったのも頷ける。
再び『虎』が仕掛けてきた攻撃をアルは飛び上がって避けた。
「インパクト・オン!!」
拳を額に突き刺すが、仕留めるには至らなかった。『虎』が頭を振るってアルを振り払う。
着地したアルはミッションメモリーをスピアからレガースに付け替えた。
「Ready!」
「Exceed charge!」
アルが飛び上がり、止めの一撃を当てようとする。
が、その途中で背後から何者かの攻撃を受け、撃ち落された。
「ぐわっ!?」
突然の事に驚きながら辺りを見回すが、何も見当たらない。
その正体を追求している内に体勢を立て直した『虎』が襲い掛かって来た。
『くそっ! こうなったら……』
アクセルメモリーを素早く付け替えてアクセルフォームにチェンジする。
「Complete!」
そしてセイバーにミッションメモリーをセットした。
「Ready!」
『これならさっきの狙撃を弾く事も出来る。短期決戦だ!!』
「Accelerate!」
加速に入ったアルは一気に『虎』の懐に入り込んだ。
この状態ならば『虎』の体が盾になって狙撃を受ける事も無い。
「オアアアアァァァァッ!!!」
アルはセイバーで『虎』を連続して斬りつけた。
切り刻まれた『虎』の光が薄れて行く。
そして間合いを一度離し、アルのエネルギーを込めた刃が十字に『虎』を切り裂いた。
必殺の『ヴァルキリアセイバー』にその身を四分割された『虎』が完全に消え去る。
「3…2…」
アルは首のスタータースイッチを押し込んだ。
「Reformation」
展開した装甲が戻り、通常状態に移行する。
次の戦いに備えて出来る限り力を残しておく必要があった。
『アクセルフォームは使えないが……十分戦えるな』
アルはシルフィードを喚び出し、クリーチャーの反応があった所まで急いだ。
『狙撃者の正体も気になるが、今はクリーチャーが優先だ』
その狙撃者は建物の上からその様子を眺めていた。
「……やっぱり『コーリングビースト』じゃ『ブースト』を使っても仕留められなかったな……
……でも、十分足止めは出来たよね?」
猫のような耳をぺたり、と寝せながら人影は言う。
「ボクもあっちに行かなくちゃ……」
人影が何かを取り出し一言呟くと、黒地に金のラインが印象的なその姿が掻き消えた。
「ファンシーマグナム・ソウルバレットぉっ!!」
ばしゅううっ!!
「バレット! バレット! バレット!!」
ばしゅうっ!ばしゅうっ!ばしゅううっ!!
「バレットバレットバレットバレットバレット!!」
ばしゅばしゅばしゅばしゅばしゅううっ!!
『へ、へぷー……流石に私も疲れて来たぞ……』
「あーもう! 何でこんなに数が多いのよっ!!」
そこにいたのは体長40〜50センチ程の小悪魔だった。
しかしその数はざっと30匹。
一回の攻撃で二、三匹纏めて仕留められた事もあったが、まだ十数匹残っている。
「あと半分なんだから気合で頑張って!」
『無茶を言うなっ!!』
へぷーの要求にアル・フェイルが抗議の声を上げた。
『……! へぷー、後ろだ!!』
「えっ?」
へぷーが振り向くと一匹のインプが飛び掛って来ていた。
「ギィィィッ!」
「きゃ……」
その時、飛び掛って来たインプを閃光が撃ち抜いた。
「ギィッ!?」
それに撃たれたインプはそのまま消滅して行く。
「な、何っ!? 何が起こったの?」
閃光が走ってきた方向にはへぷーと同じ位の背丈の少年が立っていた。
その手には携帯電話を変形させたような物を持っている。
「邪魔だよ」
少年はそう言い放つと残ったインプに銃撃を浴びせ、次々と消滅させて行く。
「つ、強いね……」
『うむ。……あの少年、何者だ?』
「はい、おしまい」
最後のインプを片付けると少年は手に持った携帯電話を下ろした。
「あ、あの……助けてくれて、ありがとう」
へぷーは少年に向けてそう言った。
白い鎧に青のライン、胸の中心には紫色の宝石のような物が埋め込まれている。
しかし、何よりも目を引いたのはその少年に生えていた犬のような耳と尻尾……
「気にしなくてもいいよ。それより、君の手に持っているステッキ……」
その言葉にへぷーは小声でアル・フェイルに問いかけた。
『……どうする、アル・フェイル? あなたの事を話しちゃってもいいかな?』
『ううむ……どうしたものか……』
少年はステッキをしばし観察した後に口を開いた。
「……そうか、君で間違い無いようだね」
そして手に持った携帯電話をへぷーに向けた。
「あまり手荒な真似はしたくないんだ。大人しくそれを渡してくれないかな?」
「『!?」』
銃口を向けられたへぷーとアル・フェイルが硬直した。
「じょ、冗談……だよね……」
『へぷー、あいつの目は本気だ! ……今はとりあえず逃げるぞ!!』
アル・フェイルは強烈な赤い光を放った。
少年が反射的に目を庇う。
そしてその隙にへぷーは逃げ出していた。
へぷーは民家の屋根の上を忍者のように飛び移りながら逃げていた。
「ねえアル・フェイル、あの子何なの!?」
『私にも分からん! しかし明らかに私達に敵意を向けていた!』
「もしかしてあの子が今回の事件の首謀者!?」
『何らかの形で関わっているだろうと言う事は予測されるな!』
その時空から閃光が降って来る。
見上げると先程の少年が背中にブースターのような物を付けて飛んでいた。
「逃がさないよ」
少年は背中から伸び、両脇に抱えるように装備された銃を乱射した。
「わ、わわっ、わわわわわっ!?」
へぷーは慌てながらわたわたと動き回る。
『落ち着け、へぷー! どうやら奴の銃撃は牽制のようだ。
相手が上空にいたのでは撃墜は難しい。とにかく高い所に行って反撃するぞ!』
「あ、う、うん、分かった!」
へぷーは民家の陰に隠れながら少年から距離を取り、工事中の高いビルの上に陣取った。
『此処からならば相手を捉える事が可能だろうな。
……へぷー、見えたぞ!!』
「いくよっ! ……ファンシーマグナム・ソウルバレットっ!!」
ばしゅううううううんっ!!
ステッキの先から、ピンクの光弾が発射され、少年に向かって突き進む。
「Exceed charge!」
少年の銃身が強い紫色の光を発し、そこから放たれた二条の紫色の光線がへぷーの放った光弾を貫いた。
「きゃ……!」
へぷーは慌ててその場を飛び退き、貫通してきた光線を躱す。
そして少年がへぷーの目の前に降り立った。
「鬼ごっこは終わりのようだね」
「ううっ……」
へぷーは一歩ずつ後ろに下がって行った。
少年も一歩足を進める。
一歩、また一歩。そして少年が口を開いた。
「ちょっと右を見てよ、……不意打ちなんてしないから」
へぷーは思わず右を見てしまった。
『おい、へぷー! 相手の言葉に耳を貸すな!!』
黄色と黒のラインと『工事中』の文字。
「今度は下」
下を見る。工事中のせいか随分と足場が不安定だ。
「……ってまさか!」
「ご名答」
少年はへぷーの足場に集中砲火を浴びせた。
そして足場が崩れ去って行く……
「へぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
……がさっ、がさがさっ……
『……どうやら助かったようだな』
「うん。……でも木の真下に落ちる事が出来て本当よかった……」
『上から奴が襲い掛かってくる気配は無さそうだ。今の内に逃げるぞ』
「……枝でちょっと腕切っちゃった。でも何故か服は破けていないよね。
……ねえ、アル・フェイル。今更なんだけど何で私、今制服姿なの?」
確かに先日変身した時はウェディングドレス姿だったが、今は昔のように制服姿だった。
『いや何、昔の姿の方が戦い易いと思ったのでな』
「……やっぱりスカート丈は短いんだね……」
『しかしどうせ見えても中身はくまパ……って痛い痛い痛い折れるっ!!』
ステッキの両端を持ってしならせていたへぷーは少し離れた所にいるワーウルフに気が付いた。
「アル・フェイル、敵が!!」
『何っ!?』
へぷーはステッキを構えた。
「ファンシーマグナム……」
「ハンマー・オン!!」
へぷーが技を放つ前に突然赤い円錐状の光がワーウルフを捉えた。
「……えっ?」
「Exceed charge!」
「オオオオオォォォォォ!!!」
そしてワーウルフの体を何かが貫いて行く。
消滅して行くワーウルフを背に地面に降り立ったのは……
へぷーより少し低い身長の男の子。
赤と銀の鎧に黄色と黒のライン。
胸に埋め込まれた赤い宝石。
……そして犬のような耳と尻尾……
「アル・フェイル……あの子……」
『ああ、おそらくさっきの奴の関係者だろう』
「ふう……」
その犬耳の少年――アルはクリーチャーを倒して一安心したように息を吐いた。
「そこまでよっ!」
「……?」
アルがへぷーの方向を向く。
「片手にステッキ、心にファンシー、唇に笑顔をたずさえて……
魔法少女まじかる☆へぷー!
町を騒がすこのエッチ!!(・∀・) ファンシーの鉄槌、受けなさいっ!!」
「……は?」
名乗りを上げるへぷーに対してアルは何が起こっているのか理解が出来ていない。
「先手必勝っ! ファンシーマグナム・ソウルバレットぉっ!!」
へぷーが光弾を放ち、アルが慌ててそれを避ける。
「おわっ!?」
「……外したっ!?」
アルは目の前の少女――へぷーに目を向けた。
『まさか……こいつが今回の事件の!?』
その姿こそ小さな少女だったが、『王』も同じような少女だった。
『ちょうど良い……お前達の目的、吐いて貰うぞ!!』
アルも戦闘態勢を取る。
――そして、二人の戦いの火蓋が切って落とされた――





この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。
