「〜♪」
休日、オレはお気に入りの音楽を流しながら小説を読んでいた。
こうしていると二年前のあの戦いが嘘のようだ。
……いや、そうなった事を素直に喜ぶべきだな。
本のページを捲り、テーブルに置いたジュースを飲みながらゆったりとした時間を過ごす。
知り合いに薦められて読み始めた本だが、中々に面白い。
「ん……飲み物が切れたな。ついでに買出しにでも行くか」
――変わらぬ日常――
「月夜様、お味は如何ですか?」
「うん、美味しいよ。……それにしても三日月凄いね。このティラミスなんかケーキ屋の味にも負けてないよ?」
「お褒めに預かり光栄です」
「本当に凄いよ。料理は和洋中華何でもござれ、掃除も洗濯も出来るしね。絶対いい主夫になれるよ?」
「今は月夜様のお世話で精一杯ですよ……」
「でもいつも町でお姉さん達に声掛けられるよね?」
「本気で言っている訳では無いと思われます」
「私のお兄ちゃんになって下さいって言ってた近所の女の子は?」
「血の繋がりが無いのですから無理なのですって諭しておきました」
「……こないだ同い年位の娘にお手紙貰ってたよね……」
「!? ……今は忙しいので貴女の気持ちに応える事は出来ませんとお断りを入れておきましたよ……」
「……三日月……」
「な、何ですか、その目は!?」
「あんまり女の子を泣かせるような事しちゃ駄目だよ?」
「何ですかそれはっ!!??」
――いつも通りの生活――
「ふう……」
煙草をふかしながら新聞を読む。
先程まで居た常連客の一人はもう帰ってしまった。
暫くはのんびりと過ごす事が出来るだろう。
いつも通り新聞の記事にはこれといった重大な事件は載っていない。
「平和だなぁ……なあ、お前もそう思うだろう?」
俺は写真立ての中に写っている男にそう問い掛けた。
――平和に過ぎて行く時間――
「ふわぁぁぁぁぁ……」
「……月夜、あなた女の子なんだからちょっと気を付けた方がいいんじゃない?」
「だってせっかくのいい天気ですし……それに、今は猫の姿ですから」
お姉さまはその場で伸びをした。
「確かに、いい天気ね……」
「でしょう?ですからこういう時はゆっくりとお昼寝を……」
「……じゃあ、あたしの膝の上に来る?」
「いいんですかっ!? では喜んで……」
「あ、やっぱり今の無しにしておいて」
「がーん……」
――ずっと続くと信じていた日々――
全女性憧れのウェディングドレス。
私はその純白の衣装に身を包んでいた。
まるで夢やお話の中のお姫様みたいに……
でも、夢じゃ、無い。
『私、本当に結婚するんだね……』
その相手は――私がずっと憧れていた、あの人……
――その中で掴んだ幸せ――
――それらが今、崩されようとしていた――
……此処は瓦礫に埋もれてしまい、忘れ去られてしまったとある地下室。
そこに何処からか現れた大小の赤い光が集って行く。
その光は一つの塊となり、一瞬一際強い輝きを見せた。
『……何かが……来る……悪意を持った……何かが……』
魔法少女まじかる☆へぷーVS仮面ライダー169(アルキュン)
〜CROSSED TALES〜

第一話

コンコン、と控え室のドアがノックされる。
「あ、はい。どうぞ」
扉を開けて入って来たのはこれからみさきの夫となる人物だった。
「よお、みさき」
「じゅん先輩……」
タキシードに身を包んだじゅんはそれを聞いて苦笑する。
「その呼び方はもうやめたほうがいいと思うぞ」
「じゃあ……あ、あなた……とか……」
みさきは赤面しながらそう言った。
「それはもうちょっと先にしておいたほうがいいな。とりあえず今は『先輩』でもいい」
「……じゃあ先輩、何でここに?」
「一足先にみさきのウェディングドレス姿が見たくてな」
みさきの顔面が更に赤くなる。
「綺麗だぞ、みさき」
赤面したみさきに止めの言葉が入った。
『いつもの事だけど……何で先輩は素で恥ずかしい台詞をぽんぽんと口にできるかな……』
「衣装合わせの時に見てたじゃないですか……」
「打ち合わせと本番では全然違うだろ?今のほうがずっと綺麗だ」
「ぁぁぅぅぅ……」
みさきは恥ずかしさのあまりもう何も言えなかった。
「……みさき……」
じゅんが真面目な顔になって言った。
その眼に圧されてみさきも落ち着きを取り戻す。
「……今、幸せか?」
「……うん、幸せだよ。
……でも、幸せすぎて……ちょっと怖い……」
それを聞いたじゅんは少し呆れたような顔をした。
「またそれか?そういう事は考えるなって言っただろ。
大丈夫だ、俺がいつも傍にいてやる。いつでも頼ってみろ」
「あ……うん、ありがとう、先輩……」
「そろそろ時間だぞ、一緒に行くか?」
「うん……ってきゃ!?」
みさきは長いドレスを踏んでしまい、前のめりに倒れてしまう。
しかし、倒れる寸前でその体をじゅんが支えた。
「おっと……」
「す、すみません。先輩……」
「そういうドジな所は変わってないな」
「……へぷー……」
その口癖もな、とじゅんは言った。
変わらぬみさきに少し呆れているのか変わっていない事が嬉しいのかが曖昧な笑顔で……
改めて二人は手を繋いでドアに向かって行く。
その先には幸せな未来が待っているだろう。
……しかし、その幸せを阻害する者がいた……
急に後ろからガラスの割れる澄んだ音が響き、二人はそれに振り返った。
そこに居たのは、一体の狼人間……
低い唸り声を挙げ、敵意を剥き出しにしている。
「ガアアァァァァァァ!!」
ワーウルフがみさきに襲い掛かって来た。
「みさきっ!!」
それを庇い、攻撃を受けたじゅんの体が壁に叩きつけられる。
「先輩!?」
みさきはじゅんの元に駆け寄った。
じゅんは気絶していたが、命に別状はなさそうだ。
安心した束の間、ワーウルフがじりじりと詰め寄って来る。
みさきは辺りにある物を手当たり次第に掴んで投げ付けた。
「来ないでっ……来ないでったら!!」
投げ付けられてくる物を気にせずに平然とワーウルフは近付いて来る。
投げる物が無くなったみさきはじゅんを庇うようにして立ち上がった。
「こ、こう見えても空手を習ってたんだから!」
震えながら構えを取るみさきを嘲笑うかのように顔を歪めたワーウルフは腕を大きく振り被った。
――その時、ワーウルフとみさきの間に入り込むように赤い光が出現した――
「グゥ!?」
ワーウルフはその光に眼を眩ませ、怯んだ。
宙に浮いた赤いブローチから声が響いて来る。
『へぷー、無事だったようだな……』
「その声……まさか、アル・フェイル!?
でも、どうして?確かあの時に……」
『そんな事はどうでもいい! 今のお前の姿を見てある程度の事情も分かった!
戦え、へぷー! お前の大切な人を守る為に!!』
「……うん、分かったよ、アル・フェイル!」
みさきはアル・フェイルを手に取ると空高く掲げた。
「シェイプチェンジ! へぷー・まじーっく!!」
――ピンク色の光が、みさきを包み込んだ――
120センチほどの身長。
頭に被ったウィザードハット。
全身を包むのはサイズが縮んだウェディングドレス。
手に持ったステッキ(元アル・フェイル)。
「片手にステッキ、心にファンシー、唇に笑顔をたずさえて……
長年のブランクも何のその! まじかる☆へぷー! 再び推参!!
幸せ邪魔する悪党に愛の力を教えてあげるっ!」
ステッキをワーウルフに向かってびしっ!と突きつけ、へぷーはそう言い放った。
ワーウルフはへぷーを脅威と見なしたのだろう。咆哮を上げながらへぷーに襲い掛かった。
へぷーはじゅんの体を抱えるとドアに向かって一目散に逃げ出す。
『とりあえず今は先輩を安全な所まで運ばなくちゃ!』
「ガアアァァァァ!!」
ワーウルフもそれを追い掛けていった。
「ウウゥゥ……」
ワーウルフは外に出て辺りを見回し、へぷーを探していた。
「そこまでよっ!!」
建物の上からへぷーの声が響いた。
「先輩は避難させたし……後はあなたを倒すだけ!」
へぷーはステッキを回し、両手で大きくハートマークの軌跡を描く。
「愛を忘れた悲しいものよ……」
交差させた腕を開き、ステッキを水平に構える。
「愛の力で癒されなさい……」
ステッキを掲げて、へぷーは叫んだ。
「そして 可愛くなーあれぇっ!!」
ステッキが光り、それに呼応するようにハートの軌跡がピンクの微光に包まれる。
「ファンシーマグナム・ソウルバレットぉっ!!」
ばしゅううっ!!
収束した光がステッキから撃ち出された。
それに撃たれたワーウルフが苦悶の声を上げる。
そして、その姿がピンクの光の中に吸い込まれていった。
その後に残ったのは可愛らしい表情をした狼型のぬいぐるみ。
へぷーは安心したかのように一息ついた。
『……へぷー。お前に悪意を向けている何者かがいる。先程のあいつのように……
戦ってくれ、お前の幸せを守る為にもな……』
「終わって……なかったんだね……」
へぷーは悲しそうな表情を浮かべた。
「……そうだ! 救急車を呼ばなくちゃ! 早く先輩を病院に……」
アルはマスターの店に向かっていた。
『あそこなら落ち着いて本が読めるよな……』
この二年の内に例の事件の関係者達が常連客に加わっていたが、それでも十分客足は少ない。
マスターの売上に貢献するのも悪く無いだろう。
もう通り慣れてしまった賑やかな道を外れた道筋を歩いて行く。
そこは人通りも少なく、車もあまり通らない道なのでいつも静かだった。
『何かいつもより静かだよな……』
急に後ろでドスン、と音が立ち、アルが何気なく振り向いた。
「……え?」
おそらく電柱の上から飛び降りて来たのだろう。
そこに立っていたのは……
醜悪な顔、1m程の短い背丈、手に持った棍棒のような物……
それはRPGで言う『ゴブリン』だった。
「あ……」
アルは硬直していた。
目の前のゴブリン、そんな生物がいるはずが無い。
そうするとそいつは……クリーチャーとしか考えられない。
「シャゥゥゥゥゥ!!」
ゴブリンが硬直しているアルに棍棒で殴りかかった。
アルは慌ててそれを躱し、ゴブリンに背を向けて逃げ出す。
『嘘だろ……? 「事件」は二年前に解決していたはずじゃないか!!』
「フゥォ――!!!」
後ろでゴブリンが何かを叫ぶと、アルを追いかけ始める。
が、短い足のせいかその速度はそれほど速くない。
『……よし、振り切れる!』
アルが角を曲がり追っ手を撒こうとすると、その眼前に別のゴブリンが降り立ち道を塞ぐ。
その道を諦め、元の道に戻ると追いかけてくるゴブリンが三匹になっていた。
「増えてるぅぅぅぅぅぅ!!!」
再び全力で駆ける。その数は増えていたが、足の速さは変わらない。
暫く走り、距離を引き離して安心しかけると目の前の道が一匹のゴブリンに塞がれていた。
アルは咄嗟の判断で近くにあったごみ袋を掴み、ゴブリンに叩き付けた。
そして相手の視界が塞がれている間にすかさず全力で蹴りつける。
「ゲブッ!?」
ゴブリンはそれに怯み、手にしていた棍棒を取り落とした。
素早くそれを拾ったアルは怯むゴブリンを棍棒で殴打し、その脇を潜り抜ける。
だが、その先には更に三匹のゴブリンが待ち構えていた……
三叉路の曲がり道にも五匹、完全に道が塞がれている。
『ヤバイな……』
八匹のゴブリンはじわじわとその距離を縮めて来る。
先程棍棒で殴りつけたゴブリンも立ち上がる。その後ろには三匹のゴブリンが追いかけて来ているはずだ。
完全に包囲された上に相手は12匹。……絶望的な数字だった。
無駄だと解りつつもアルは棍棒を構える。
ゴブリン達が襲い掛からんとしたその時――
――辺りに閃光が走った。
前方の三匹のゴブリンがそれを受けて倒れる。
そこにいたのは……
「アル、無事か!?」
「マスター!」
マスターが銃を構えて立っていた。
その光景はアルとマスターの邂逅を思わせる……
アルは前方のゴブリン達が苦しんでいる内にその横をすり抜け、マスターに駆け寄る。
マスターは向かって来るアルに何かを投げ渡した。
「!? これは……」
「すまない、アル。お前にはもう戦って欲しくなかったがこのまま奴らを放っておく訳にはいかない。
……もう一度戦ってくれ、……仮面ライダーとして!」
「……ああ、勿論だ!!」
アルは振り返ると手にしたブランクフォンを操作し、変身用のベルトを喚び出す。
それに応えたブランクフォンの表面に紋様が浮かび、169フォンとなった。
「お前等……そう言えば随分といじめてくれたよな……今度はこっちの番だ!!」
「call 169 …standing by…」
「変身!!」
――空高く掲げた169フォンがベルトに取り付けられるとリング状の光がアルを包み込んだ――
「Complete!」
110センチ程に縮んだ身長に犬のような耳と尻尾。
赤と銀を基調とし、黄色と黒で縁取られた装甲。
そして、全身に力が漲ってくる懐かしい感覚……
――仮面ライダー169、再臨……
「オオオッ!!」
変身したアルは向かって来るゴブリンを次々と殴り、蹴り飛ばしつつミッションメモリーとアクセルメモリーを取り外した。
そしてレガースにミッションメモリーを取り付ける。
「Ready!」
そしてもう片方のアクセルメモリーをベルトに付いている169フォンのメモリースロットにゆっくりと挿し込んだ。
「Complete!」
胸の装甲が展開し、ベルトから放たれた赤い光を受けて胸の宝石が強く輝き鈍い銀色のボディを力が駆け巡る。
超高速戦闘形態、アクセルフォームだ。
アルは首に付いた169アクセルのスイッチを押し込む。
「Accelerate!」
加速状態に入ったアルは空高く飛び上がった。
「ハアアアアッ!!!」
そしてゴブリン達に次々と捕縛用のポインタ弾を撃ち、続けて必殺の『トゥールハンマー』を連続で叩き込む。
「3…2…1…」
エネルギーを大量に消費した為か、それとも二年間沈黙していたライダーシステムが本領発揮出来ていないせいか、加速状態はすぐに切れていく。
最後に残ったゴブリンに『トゥールハンマー』を喰らわせた所で時間が来た。
「Time out…」
自動的に展開していた装甲が戻り、通常状態に移行する。
最初に追いかけて来ていた三匹がその有様を目にして一目散に逃げ出した。
「そうはいくか!!」
「code 462 …Attach Sylpheed」
入力したコードに応え、高速移動用装備『シルフィード』が脚部に装着される。
高速で逃げるゴブリン達を追いかけつつ、アルはミッションメモリーを手首に挿し替えてエネルギーチャージを開始する。
「Exceed charge!」
ゴブリン達を追い越したアルはシルフィードで勢いをつけた必殺の拳『アトラスインパクト』を撃つ。
三匹は成す術もなくそれを受けて倒れ、消滅していき、それを見届けたマスターがほっとしたかのように溜息を吐いた。
……その光景を少し離れた高い建物の上から見ていた者がいた。
「あれが仮面ライダーだよね……
こんなに早く見つかるなんて……褒めてもらえるかな?」
その人影は嬉しそうに猫のような耳をぴくぴくと動かした……





この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。
