もうすぐ……終わる。
戦いが、終わる。
後は『王』を倒すだけだ……
仮面ライダー169(アルキュン)

最終話 彼らが望んだ事

アルは通路を駆けていた。
途中、クリーチャーの大群が襲い掛かって来るが今のアルの敵では無い。
例え死角から攻められようとも、赤い光の帯――TActful HAbiliment――が、
自らの意思を持ってアルを守ろうとしているかのようにその攻撃を弾き、時に敵を迎撃する。
アルは空中の敵の迎撃をTAHAに任せ、正面の敵を突破する事に専念した。
リュックサックのようにして背負っていたブラスターを手に取り、コードを入力する。
「code 5246 …Blaster discharge!」
再びブラスターを背負い、肩紐に付いているボタンを押すとブラスターの一部が展開し、肩にセットされる。
「喰らえぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
ブラスターのカノン砲から放たれた圧縮エネルギー弾がクリーチャー達を撃ち、次々と葬って行く。
正面の敵を片付けた後は空中の敵を一体ずつ狙撃する。
ここでもTAHAが敵の体勢を崩したり、空から叩き落したりしてフォローをしていた。
『もう他には……居ないな』
周囲を見渡し、撃ち漏らしが無い事を確認するとアルは再び走り出した。
奥から何かの光が漏れている。其処に何かがあるはずだ。
其処は、広い空間だった。
上下左右に半球状の広いスペースが確保してあり、壁のの周囲に光を放っている燭台の様な物が飾られている。
その光が集まる中心部に、何者かが立っていた。
「……女……の子……?」
その外見は十二歳前後、茶色の長い髪と黒い瞳、そしてその身には巫女のような装束を纏っていた。
その少女がアルの方を向く。
「……その表現は正確ではありませんね。
私は雄体にして雌体、人にして人に在らず。最も神に近い者……。
私の名はTHe Abater Things……一切を滅する者、そして……」
そこで少女は一度言葉を切る。
「この世界の『王』となる存在です」
「……お前か、『王』は……」
アルが『王』を睨み付ける。
「お前を倒せば全てが終わる……覚悟しろっ!!」
アルはカノン砲を『王』に向けて発射する。
それは確かに『王』に着弾したが、その服に焦げ後一つすら付けられなかった。
「……問答無用ですか。失礼な人ですね、貴方は」
『やはり、『王』を名乗るだけの事はあるな……ならば、接近戦だ!』
アルは肩のボタンを押してカノン砲を解除すると、拳にTAHAを集めて『王』に向けて走り出した。
「オオオオオオオオオオォォォォォッ!!!」
『王』はそんなアルを目の当たりにしても身構える様子すら見せない。
不意に、アルの周りを漂う残ったTAHAの動きが変化した。
アルの正面に集中し、守りの体勢に入る。
『何っ……!?』
その動きに気が付くと同時にアルの体が不可視の衝撃に吹き飛ばされる。
「がはっ……」
TAHAを攻撃に集中していたので『王』の攻撃は完全に無効化する事が出来なかった。
「……貴方達は私に敵対すると言うのですね」
「……達?」
その意味はすぐに理解出来た。足音がこちらに近付いて来ている。
それは、月夜だった。
その瞳は紅に染まっていたが、いつもの月夜のままだ。
部屋に辿り着いた月夜が事態を確認してアルに声を掛ける。
「……アル、どうしたんだ!? それにあいつは……」
「気を付けろ月夜! そいつが『王』だ!」
月夜が『王』の方に向き直る。
「そうか、お前か……お姉さまを、返して貰うぞ!」
月夜が素早い動きで『王』に接近して行く。
「待て、迂闊に近付くな!」
撹乱するかのように『王』の周りを無作為に駆けていた月夜の動きが変わり、背後から猛スピードで『王』に拳を繰り出した。
しかし、それすらも予測していたかのように『王』が月夜に指を向け、不可視の衝撃で迎撃する。
「月夜!」
アルは吹き飛ばされた月夜に駆け寄って行く。
月夜はそんなアルを静止した。
「アル、戦う準備をしろ! 二人ならきっと何とかなる!」
月夜は腕にミッションメモリーをセットした。
「Ready!」
アルもブラスターを手に取り、コードを入力する。
「code 143 …Breaker mode!」
「はあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「オオオオオオォォォォォォ!!」
月夜とアルが同時に、時には交互に『王』に武器を繰り出す。
『王』は手にした御弊の先から光刃を伸ばした剣でそれらをいなし、余裕の笑みすら浮かべる。
TAHA自体の攻撃は何かの力場に遮られて届かなかったので、待機状態で防御に専念させている。
この状態ならば不可視の衝撃を軽減する事が可能だ。
月夜の方は、ワイルドモードで更に強化された生命力と回復能力で『王』の攻撃に耐えていた。
「クロー・チェック!!」
月夜の爪が『王』を襲う。
流石にそれをまともに受け止める気は無かったのか、『王』がそれを回避して月夜の腕を剣で打つ。
そこに隙を見出したアルが足にTAHAを集め、『王』に蹴撃を浴びせる。
だが『王』は打ち付けた剣の柄で月夜を打ち払い、隙が出来ている間にアルを不可視の衝撃で吹き飛ばす。
そして、再び月夜と対峙した。
「くっ……」
アルは地面を転がりながらもコードを入力する。
「code 103 …Baster mode!」
光刃が消え、銃の形態になったブラスターを構える。
「Exceed charge!」
「月夜ぉぉぉ!!」
アルが銃の引き金を引いた。
それにいち早く気が付いた月夜がその場を離れる。
そして、大口径の銃撃が『王』に直撃した。
「……やったか?」
閃光と着弾の煙の間から現れたのは剣を正面に構え、障壁を展開している『王』の姿だった。
『王』は剣を構え直し、再び臨戦体勢に入る。
その時五本の蒼い閃光が走り、『王』がそれに反応して障壁を張る。
「月夜様、アルさん!!」
『三日月!!』
蒼の装甲に身を包んだ三日月がそこに居た。
「少々遅れてしまったようですね。今から私も参戦します!」
『王』は結集した三人をしばし観察する。
「……どうやら今のままでは少々てこずってしまう様ですね……」
そして、右手を上にかざす。
それに呼応するかのように周りの燭台の光が強まり、『王』に向けて収束していった。
「……ひとまずはこれで十分です」
『王』から感じられる力が一際強くなっている。
三人はそれに圧倒されていた。
「この力は……まさか、夜姫様達の!」
「ええ、其処の青眼の貴方の思っている通りです。
これが『無限の器』……あらゆる力を我が物とし、行使する事を可能とする私の能力です。
しかし、器はそれ自体では何の力も持ちません。その器を満たす力を注ぐ必要があるのです。
ちょうどこのように……」
『王』が何かの詠唱を始める。
その詠唱を聞いた三日月と月夜の顔色が変わる。
「この詠唱は……いけません! 守りを固めなければ!!」
――七鍵守護神!!
「……全力で放ったこれに耐え切りましたか……」
アルのTAHA、三日月の蒼の障壁、月夜のハルバートの刃の三重の守りを以ってしても、
『王』が放った指向性を持つ破壊エネルギーを完全には相殺し切れなかった。
力の余波を受けた三人がダメージを受けている。
「しかしこの力は素晴らしいですね。彼女達は生かしておく事にしましょう……」
「貴方は……その力で何をなさるつもりなのですか……?」
「そうですね、せめてもの手向けに教えましょう。
私の望みは『無限の器』を満たして絶対的な力を持つ者となる事です。
その為に一度世界を壊して再構築します。私に力を供給する者を育てる『箱庭』として……」
「……今、生きている人達は……」
「私にとって価値を持たないのであれば生かしておく意味はありません」
「ふざけるな!皆それぞれの人生を生きて其処に幸せを見出しているんだ!
それをお前の身勝手な意見に当てはめて無価値の一言で片付けられてたまるか!」
「私の信じた事……そこには私にとって何物にも代え難い価値があります!
例えそれが他の人にとってつまらない物であったとしても!」
「ボクは今まで色々な過ちをしてきた……それでも、それまでの積み重ねが今のボクをつくり上げているんだ!
今のボクを……そしてボクを変えてくれた人達を否定させたりはしない!」
「……貴方達は私の創り上げる世界に不必要な存在です!
貴方達を滅ぼします!今此処で!!」
「滅びるべきなのはお前だ!決してこの世界を否定させたりはしない!」
『その通りだっ(です)!!』
アルの赤が、三日月の蒼が、月夜の橙の輝きがより一層強くなった。
対する『王』の力も更に増大している。
アルは手にしたブラスターを投げ捨てて三日月、月夜と共に『王』に向かって駆け、同時に跳んだ。
「オオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!」
「はああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「やああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
三人の脚に込められた其々の光が一丸となって『王』にぶつけられる。
『王』は自らの全ての力を込めて破壊の光を解き放つ。
その二つの光がぶつかり合い、その余波が特別に頑丈なこの部屋の壁にすら亀裂を入れていく。
――――そして、片方の光が押し負けた――――





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