あの方のためならこの身が傷つくことを恐れたりはしない。

あの方を守るためなら自分の全てを投げ打ってでも戦い続ける。

それが、使い魔としての――いや、この私自身が望む事だから……




仮面ライダー169(アルキュン)



第三話 静かなる強き決意



「……と言う訳です。」
「はあ……にわかには信じ難い話だな、もう慣れてきたが」
マスター経営の喫茶店の中、アルは目の前の三毛猫に向けて言葉を投げかけた。
あまりにも非常識な事が短期間で起こりすぎたため頭がおかしくなった……訳では無い。
この三毛猫は三日月なのだ。あの7,8歳位の少年の姿は仮の姿で、この猫の姿こそが本当の姿であるという。
流石に最初に道端で猫に話し掛けられた時は驚いたが、
自分のことを三日月と名乗り、仮面ライダーの話をされたからには話を聞かないわけにはいかなかった。
「これが本当の姿ですからね。こちらの方が気楽なんですよ」
三日月はカウンターの上にちょこん、と座りながらそう言った。
もし他に客がいたら大変だが今は誰も客はいない。
平日である事を考慮してもやはりあまり流行っていんだな、とアルは勝手に結論付けた。
今日は平日だがアルの仕事は休みだった。
「おーい、悪いがその姿はここでは遠慮してくれ。抜け毛の掃除が大変だ」
注文の品物を作りながらマスターが言った。
まあ、この店を経営しているマスターの立場からすれば当然の反応だろう。
「や、これは失礼」
三日月はそう言ってカウンターから飛び降りると、どこからか変身用の392ミカヅキフォンを取り出した。
392フォンから光が発せられると三日月はたちまち人の姿となる。
「……こっちの方が変身っぽいよな。それもその392フォンの力なのか?」
アルの問いに三日月はカウンターの席に付きながら答える。
「半分正解ですね。この392フォンの力で私の魔術を補助している……という表現が正確です。」
「魔術? それってアレか? ゲームとかにあるこうドカ――ンでズキャァァァンでバリバリ――って」
「その表現はどうかと思いますが」
「注文の品、出来たぞ。これでもつまみながらゆっくり話せ」
二人ともその意見に異論は無かった。

「つまり魔術ってのはオレが考えているものとは少し違うという事なんだな?」
アルはコーヒーをすする。
「ええ、この世界とは違った法則で力を導き出す……と言った所ですか。」
三日月は皿の上のツナサンドに手を伸ばした。
「ゲームみたいに何でも出来るって訳じゃないんだな」
アルはハムサンドを食べながら言う。薄切りのハムが何枚も挟んであり、食べ応えがあった。
「ええ、あくまでこの世界にある技術より出来る事の幅が広いゆえに万能のように見えるだけに過ぎません」
三日月はツナサンドをアイスコーヒーで流し込んだ。
「さっき392フォンを取り出したのも魔術を使ったのか?」
ハムサンドを飲み込んだアルは次のタマゴサンドに手を伸ばす。
「ええ、転移の魔術です。あれくらいの物なら私の未熟な魔術でも転移させることが出来ます」
三日月は食べる手を止めた。
「この392フォンを使えば出来る事の幅が更に広がります」
「これって魔術に関係しているのか?」
アルは自分の169フォンを取り出した。
「ええ、ライダーシステムの動力源……確かHoly Energy of Person Underageとかいいましたか。
 この力の性質は多少の違いがあれど魔力と酷似しています」
「ふむ」
「何も無い所から物質を転移させたり身長を縮める……更には獣の耳や尻尾まで生やす。
 こんな事が科学で説明できるとはアルさんも思っていないでしょう?」
確かに今発表されている科学技術が氷山の一角に過ぎないとしても、
瞬時にDNAを書き換えたり質量保存の法則を無視して身長を伸縮させるのは無理だろう。
「じゃあこの169フォンがあればオレも魔術が使えるのか?」
「無理ですね。ライダーシステムを通して力を使う事は出来るでしょうが、
 この世界の人々には先天的に魔力を感知、行使する力が欠けています」
「残念」
アルは手にもっていたタマゴタンドを口に放り込んだ。
「しかしこれも訳の分からない代物だな」
アルはタマゴサンドを咀嚼しながら169フォンを手で弄る。
「身長が縮むわ耳と尻尾が生えるわ……三日月の場合は猫だよな?」
「猫ですし。アルさんは……」
「オレは犬じゃ無いし、ましてや犬チックでも無いぞ!!」
アルは何かのスイッチが入ったかのように強く否定する。
「しかしマスター、これは一体何なのですか?」
「そこの所はオレも聞きたい」
二人はそろってマスターに目を向ける。マスターは困ったような顔をした。
「……実は俺もその力についてはあまり分かっていない。俺が作った物じゃ無いしな」
「じゃあ誰が作ったんだ?」
「……俺の……友だ」
マスターのどこか悲しそうな表情に二人は何かを察したのかそれ以上の事は聞かなかった。
黙って目の前のサンドイッチを飲み物で喉に流し込む。
「ごちそうさん、中々美味かった」
「御馳走様でした」
「じゃあアルは700円、三日月は650円だな」
「……金はきっちり取るんだな。そんなに窮乏してるのか?」
「バカ言え、公私混同はしない。どんな客からでも金はきっちり取る」
商魂逞しい事だ。そう思い、アル三日月はカウンターに代金を置いた。
「毎度あり」



二人は今、近くの幼稚園・保育園、小・中・高等学校を見て回っていた。
クリーチャー達の狙いは15,6歳位までの子供である。
ならばただ待つよりもこうして学校を巡回して回るほうがクリーチャーの動きを捉えやすい、そう考えたためだ。
まずはすぐ近くの高等学校、異常なし。
そこから1キロほど離れた小学校と中学校、異常なし。
その途中にあった保育園にも特におかしな動きは見られなかった。
バスに乗ってそこからさらに4キロほど離れた中学校へ向かう。ここも異常なし。
…………
「なあ」
7つめの学校のとある小学校の校門の前でアル三日月に話し掛けた。
「何でしょう?」
「周辺の子供達がいる学校や幼稚園を見て回る。端から見たら不審者みたいだよな、オレ達」
『……』
二人とも言葉を発する事が出来なかった。意外な落とし穴、と言うよりよく考えてみれば安易に予測できたことだった。
「……いつ警察に呼び止められてもおかしくありませんね、私達……」
『………………』
更に長い沈黙が訪れた。連続行方不明事件で町を巡回する警官の数が増えている今の状況下では洒落にならないジョークだ。
「……この方法はやめにしよう」
「……こちらも異論はありません」
「……君達そこで何をしている?」
『!!!!!』
後ろから聞こえた声に振り返るとそこには本当に警官が立っていた。
「質問に答えて欲しいんだが」
「あああ、あのですね……」
アルは無茶苦茶焦っていた。端から見ると怪しい事この上ない。
「この学校に通っている兄を迎えに来たんです」
三日月の方は落ち着いていたようだ。淀みも無く警官にそう答える。
「君の……兄さんを?」
「ええ、こんな物騒な世の中ですからね。と言う事で長兄のアル兄さんにも付いて来てもらった訳です」
「え、ええそうです。オレは大人ですから連続行方不明事件にも巻き込まれませんし」
「しかし少しばかり早く来すぎたようですね。どこかの店で時間を潰すとしましょうか、アル兄さん」
「あ、ああ、そうだな」
その警官は信用してくれたように警戒を解く。
「そうか、でも気を付けろよ。行方不明事件は時間を問わずに起きているんだからな」
「承知しています。さあ、行きましょうアル兄さん」
「お、おう」
気を付けるんだぞーと言う警官の声を後ろに二人は歩いて行く。
「ナイスフォローだ、三日月
「どうも」



二人は自動販売機でジュースを買うと公園のベンチに腰掛けて一息つく事にした。
ベンチは一つしかなかったが周りに人はいなかったので席は楽に確保できた。
「何の手掛りも掴めなかったな。別の意味で危機には晒されたが」
「まあ初日からいきなり成果が得られるはずもありません。今度は休みの日に普通に町を見て回るとしましょう」
「そうだな、それが無難だ」
ジュースを飲み終え、くずかごに缶を捨てる。ついでにその周りに散らかっている缶もきちんと捨てておいた。
「……今日はここで解散しますか」
「ああ。じゃあ次の休みにマスターの店に集合、それでいいな?」
「分かりました。……そうだ、アルさん。この機会に私の住んでいる所を案内しますよ。
 知っているに越した事はないでしょう?」
それもそうだな、とアルは思い三日月に案内を頼んだ。
「ではさっそく……」

その時、169フォン392フォンが鳴り響く。
――クリーチャーだ!!――
二人の間に緊張が走る。
「場所は……ここからおおよそ5キロ……さっき見て回っていた学校の一つだ!!」
「まずいですね……場所が場所なだけに大量の子供が誘拐される恐れがあります」
「クリーチャーもなりふり構わなくなったって事か……三日月!」
三日月は頷き、392フォンを取り出す。
周りに人はいないため変身を見られる心配は無い。
アル169フォンを取り出し、コードを入力する。

「call 169 …standing by…」

「call 392 …standing by…」


『変身!!』


三日月の体に半袖長ズボンの白いアンダースーツ、
赤いAの文字が描かれた銀に縁取られた緑色の胸部アーマー、
同じ配色のショルダー・ガード、白で囲まれた緑の手甲、
脛の中心に縦一本、上部を囲むように横に一周した赤のラインの入ったレガース、
そして左額部に白の円盤に赤でCを描いた髪留めの順に装甲が付いていく。
胸のAの文字の中心に埋め込まれた緑色の宝石のような物がキラリと光った。

『Complete!』


『code 462』

『Attach Sylpheed』


二人はシルフィードを装着すると公園から飛び出した。
曲がり角の事を考えても時速200キロほど出せば2,3分で着く。
学校の校門前まで辿り着いた時、そこにいたのは――アルが最初に戦ったのと同じタイプのクリーチャーだった。
但しその総数は軽く10を超えている。
「これはずいぶんと数を揃えたものですね……」
「慌てるな。オレはあのタイプと戦ったことがある。一体一体は弱いから個別で各個撃破だ」
「……いや、そう簡単にはいかないようですよ」
三日月はクリーチャーの一体を指差す。
「何か手のような物がクリーチャーの体から生えています。おそらく取り込まれた子供のものでしょう」
確かにクリーチャーの体の表面には小さな手や足が覗いていた。
「人質ってわけかよ……」
「元々ああやって大量の子供を攫う為のクリーチャーなんでしょう。敵と対峙すればそれは人質となる。……厄介な相手です」
「じゃあこうしよう。一人が奴らから子供を救出する。
 もう一人は子供を安全な場所まで連れて行くまであいつらを引き付けておく」
「その作戦でいきましょう」
「あいつらの攻撃力はたいした事は無い、多少攻撃をくらっても大丈夫だ」
アルはそう言うとクリーチャーの群れに飛び出していった。
三日月もそれに続く。

「おおおおおりゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!」
アルは力任せに相手の体をむしり、こじ開けると中に捕らえられた子供達を救出した。
三日月はそれを見届けるとクリーチャー達の中心に飛び込む。
頃合いを見計らって三日月も人質を救出し、三日月アルが入れ替わった。
それを何度も繰り返し、全ての人質を救出すると、三日月は魔術を使って子供達を避難させている建物の扉を閉ざした。
「人質はもう大丈夫です! 遠慮なく行きましょう!」
「よっしゃ!」
アルは高く飛び上がり、クリーチャー達の輪から抜け出した。
と同時に空中でミッションメモリーを取り出し、スピアにセットする。
三日月も右腕の手甲にミッションメモリーをセットした。

『Ready!』


電子音が鳴り響き、光が槍の穂先の形に収束する。

『Exceed charge!』


槍に集まった光が狼を模った冷気となる。三日月の拳に凝縮された光が強く輝く。
「はあああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「……!!!」
冷気の狼の顎がクリーチャーをまとめて飲み込み、凍りついたクリーチャー達を三日月の放った拳がまとめて打ち砕いた。
後に残されたのは辺りに飛び散ったクリーチャーの残骸のみだった。

「よし!!」
「……いえ、まだです!」
アルが残骸に目を向けると、残骸が一箇所に集まり一体の巨大なクリーチャーとなる。
「雑魚が集まって合体か。ありきたりなん――」
アル巨大クリーチャーに向けて突進しようとすると何者かに腕を捕まえられた。
後ろを振り返ると先ほどの普通サイズのクリーチャーが腕を掴んでおり、さらにもう一体がアルに組み付いてきた。
巨大クリーチャーは組み付いたクリーチャーごとアルに腕を叩きつける。
その攻撃力は通常のクリーチャーとは比べ物にならなかった。
アルさん!?」
三日月アルの安否を問うが、周りは4体のクリーチャーに囲まれている。
一瞬の躊躇のうちに巨大クリーチャーが目から光線を撃ってくる。
その光線はクリーチャーを貫通して三日月に直撃した。
三日月は絶叫を上げながら倒れた。
アルが立ち上がると、巨大クリーチャーの周りにはさらに5体のクリーチャーが生まれていた。
「くそっ! どこから湧いてくるんだよ!これじゃ切りが無い!」
アルさん……」
「……! 三日月、額から血が……」
一点集中した巨大クリーチャーの光線がライダーシステムの常時展開フィールドを打ち破ったのだろう。
「……かすり傷ですよ。額の傷は浅くても大量の血が出ますからね……」
「でもお前もう足がふらついて――」
「大丈夫です。まだ戦えますよ、私は」
「……何でそこまでして戦うんだ?」
「……そう言えばアルさんには言っていませんでしたね。私の戦う理由……」
三日月は右の手首に挿さっているミッションメモリーを引き抜いた。
「私はあいつ等に捕らえられた私の主を――私にとって最も大切な人をあいつ等から取り戻したいんです」
ミッションメモリーをレガースに当てる。
「……私はその為に戦っているのです。その目的を果たす為なら私は自らが傷つく事も恐れません!!」

「Ready!」


三日月の目からは確固たる信念が見える。何が起ころうとも決して揺らぐ事の無い信念が。
その目を見たアル三日月を止める代わりにこう言った。
「……オレは何をすればいい?」

辺りのクリーチャーは数十にもなっていた。じわじわと包囲網を狭め、一気に決着を付けるつもりだ。
「……アルさん」
「ああ、分かってる。」
クリーチャーの数が更に4体ほど増えた。

「Exceed charge!」

「code 106 …Burst mode!」


アルはチャージを開始する。槍の穂先に込められた光は先ほどよりも強い。
三日月392フォンを三点バーストの銃として使えるようにセットし、それを構えている。
クリーチャーが更にもう一歩包囲を縮めた。
「今です!!」
「オオオオオオォォォォァァァァァァッ!!!」
冷気の狼と392フォンから放たれる閃光が巨大クリーチャーに襲い掛かるが、
周囲のクリーチャー達がその身を盾にし、巨大クリーチャーへの攻撃を阻む。
三日月は素早く392フォンを収納し、宙に飛び上がる。
巨大クリーチャー周辺のクリーチャーは『フェンリルクラッシュ』を喰らって行動不能になっている。
一瞬巨大クリーチャーの守りがガラ空きになった。

「Exceed charge!」


三日月の揃えられた両足に集った力が光を放つ。
三日月の必殺技、蹴技『ヴァジュラ・ハンマー』だ。
しかし、巨大クリーチャーは光線でそれを迎撃する。
エネルギー同士のぶつかりが辺りに火花を散らす。
その均衡を破ったのはアルの追撃だった。
フェンリルクラッシュ』の真の力は冷気の狼による攻撃にではなく、
その後の槍にエネルギーを凝縮して全身ごとぶつかって行くようにして放つ突進攻撃にある。
その攻撃は氷付けになったクリーチャー達を易々と突き破り、巨大クリーチャーの体を捕らえた。
三日月巨大クリーチャーの均衡が破れ『ヴァジュラ・ハンマー』と『フェンリルクラッシュ』が巨大クリーチャーの体に突き刺さる。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……」
今度こそ巨大クリーチャーは塵も残さず消滅した。
同時に辺りのクリーチャーも乾いた砂になって崩れ去る。
おそらく巨大クリーチャーが自らの体の一部を使い操っていたサンド・ゴーレムだったのだろう。



「……やりましたね」
「ああ、やったな」
「……ボロボロですね、私もアルさんも」
「そうだな」
アル三日月に肩を貸した。
アルさん?」
「家、案内してくれるんだろ?そこまで肩、貸してやるよ」
「……すみません」
三日月は謝ったがその顔はどこか嬉しそうだった。
二人は「音の無い世界」を歩いて行く。
お互いに支えあいながら……



【次回予告】

【あとがき】



    

    

    


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この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。