何故こんな事になったのか、どうしてオレがやらなければならないのか。

納得のいく答えをくれる奴なんて居ないと分かっているのに、それでもまだ問いつづける。




仮面ライダー169(アルキュン)



第二話 決意の戦士



「ここ、みたいだな」
その次の土曜日、アルマスターが「連絡先だ」と言って渡してきたメモの住所まで来ていた。
そこはごく普通の喫茶店で、外から見える限り客はいないようだ。
あまり流行っていないのだろうか、とアルは思い、店のドアを開く。
ドアが開くとカラカラとベルが鳴り、店主らしき男がこちらに顔を向ける。
「あ、いらっしゃ……っと、お前か」
マスターは一度煙草から口を離したが、客がオレだと分かるとまた煙草をふかし始めた。
客商売なのに店で煙草吸ってていいのか?
「オレにはアルって名前があるんだが」
「じゃあ面倒くさいからアルでいいな、アルで」
アルは頷いた。いきなり愛称で呼ばれたことはさほど気にしていない。
『少なくともこの前の変な呼び方より数百倍マシだ』


アルは店の裏にある家の地下室に案内された。
何故地下室なのかと尋ねるとマスターは「お前変身した姿を人に見られたいのか?」と答えた。
確かに、今日ここに来た目的は「ライダーシステム」とかいう物について聞くためだ。
あの姿を人に見られるのは少し気が引けるからな、とアルは納得する。
地下室の扉にはでかでかと「研究室・室内禁煙」と書かれた紙が張ってあった。
ご丁寧に灰皿まで備え付けてある。
マスターは吸っていた煙草をそこで処理し、扉を開いた。

その扉の奥には色々な細々とした機械の部品やファイルされた紙の束、奥にはデスクトップ型のパソコンも備えてあった。
まさに研究室といった感じだ。
「おい、説明をするからとりあえず変身しとけ」
マスターはファイルの中を漁り、何かを探している。
アルは嘆息し、携帯電話? を手に取った。


「…………」
アルは改めて変身した自分の姿を鏡に映して見ていた。

黒と銀で縁取られた赤い手甲は拳の所まで覆っており、思い切り何かを殴っても拳を痛める心配はなさそうだ。
脚部のレガースの色彩も手甲と同じで、黄色でGの文字が刻まれている。
ショルダー・ガードと胸部のアーマーは銀を基調として赤く縁取られており、
胸の中心には丸く赤い宝石のような物が黄色のラインで囲まれている。
頭部には赤い円を半分に割ったような形の物がやはり黄色で縁取られ、髪に二つ留められていた。

「なあ」
「うん? 何だ?」
後ろでファイルを片手に持ち、マスターは空返事をした。その口には何時の間にか禁煙パイポが咥えられている。
「何でこんなに露出部が多いんだ? 防御力に問題があると思うんだが」
確かに防具で覆われているのは先ほどの装甲とアンダースーツのみ。
アンダースーツも上は長袖だったが下は半ズボンだった。
何より重要な頭部が全くと言っていいほど守られていない。
「フィールドが常時展開されていて常に守られているらしいぞ」
マスターは即座に答えた。
「OK、それは分かった」
アルは眼鏡のずれをくい、と直した。
「では何で身長が縮んでるんだ?」
175センチの身長も今は110センチ位まで縮んでいる。
「変身システムの元になった物の力を再現したものだから、とあるぞ」
「まあ、それも一万歩ほど譲って納得しておく事にしよう」
どんな力を再現したんだ、と言う突っ込みは控えておく事にしたようだ。
アルは右手の親指でこめかみを押さえている。
心なしか額に血管が浮いているように見えた。
「じゃあな・ん・で犬耳と尻尾が生えているんだぁぁぁぁ!!」
マスターはファイルから目を離してアルの方に向き直った。
「それは装着者の適性によって変わるらしいぞ。アルの場合は犬だな」
「な・ん・で・だぁぁぁぁ!!」
アルはとうとう耐性が切れた。つまり、キレた。
それを見てマスターが子供が面白そうな玩具を見つけたような表情でからかう。
「そりゃアルが犬チックだって事だろ」
「どういう意味だそれは!!!」
「そのまんまの意味だぞ、仮面ライダーアルキュン」
「その呼び方はやめいっ!!!」
「いい呼び方じゃないか。その姿で上目遣いで相手を見ながら子犬みたいな声できゅぅ..んとか言ってみろ。
 世の中の可愛い物好きのお姉さんも一発でコロッていっちまうぞ?」
「それは嬉し……じゃなくて! 他人事だと思って勝手な事をぬかすんじゃねぇっ!!」
「まあ、冗談はこれ位にしておいて」
マスターは急に真顔に戻った。
「ベルトがそういう判断をしたんだ。ここで俺に怒鳴っても何にもならんぞ」
その言葉に納得したのかアルはしぶしぶながら口の高さまで上げた・・・・・・・・・拳を下げる。

『本気で撃つつもりだったな、コイツ……』
マスターの頬が多少引きつっていた。


アルは変身を解き、携帯電話のような物――169アルキュンフォンのマニュアルを読んでいた。
1・6・9をもじってア・ル・キュンと読むらしいが、アル本人はその呼び方を嫌ってア・ル・クと呼ぶ事にした。
基本性能としては適正があれば変身機能の他に単体で銃としても使用できる。
また、適性が無くても普通の携帯電話として使用できるし、
クリーチャーの反応をある程度キャッチすることも可能らしい。
変身時の機能としては、169フォンの基本性能の他に、
シルフィード」――高速移動のためのローラーブレードのようなものを追加装着できる。
時速300キロまで出せるスペックを持っているとマニュアルには書いてある。
また、戦闘時にはあの「音の無い世界」を展開し、周囲への被害を無くす事が出来るという機能も備えられていた。
逆に「音の無い世界」に踏み込む事ももちろん可能である。
そしていわゆる「必殺技」も持っている。
先ほどの戦いで使用した拳技「アトラスインパクト」、蹴技の「トゥールハンマー」、
ベルトに付属した武器を使用する剣技「ヴァルキリアセイバー」に槍技「フェンリルクラッシュ」などが挙げられる。
いずれも神話をモチーフとした技だ。一つだけ仲間外れの技があったがそこはスルーしておく。
必殺技の使用方法には二通りある。
一つ目は音声入力。「インパクト・オン」のように必殺技の後半部の武器名+オンの掛け声でパワーチャージを開始する方法。
二つ目は169フォンに付いたミッションメモリーを使用したい技の部位に差込み、
169フォンから直接入力でパワーチャージを開始する方法だ。。
これだけ聞くと音声入力の方が便利に思われるが、はっきりと発音しないと発動しなかったりする、
チャージ状態の維持時間が短いという欠点もある。
また、ミッションメモリーを使用すれば、比較的長くチャージ状態を維持できる。
剣や槍などを通常状態で使用するためにはこのミッションメモリーが必要不可欠だ。


とりあえずはこんな所だろう。
アルはファイルを閉じ、マスターが淹れてくれたコーヒーをすする。
コーヒーの事については余り知らないが中々のものだと彼は感心した。
「大体の所は分かったか?」
マスターが座っていた椅子から腰を上げ、言った。その手にはコーヒーが入ったカップが握られている。
「使い方はおいおい覚えていけばいい、まずは慣れることだ」
「……なんでオレがやらなきゃならないんだ?」
アルはそう言い放った。
「オレにはオレの生活があるし戦うことを承諾してもいない。第一やるならマスターがやればいいだろ?」
「俺に出来るならとっくにやってるさ……だが俺はそのベルトを使うことが出来なかった……」
コーヒーカップを机に置き、マスターは少し悲しそうな顔をする。
「生身の俺が出来ることなんてたかが知れてる。
 せいぜい小型の火器で相手をひるませてその隙に誘拐された子供を連れて逃げるくらいだ。
 間に合わない事の方が多いがな」
「……待て、じゃあ一連の連続行方不明事件は……」
「奴らの仕業だ」
マスターはきっぱりと言った。
「アルはそのベルトを使うことが出来る。そして多くの人を助けることが出来る。そして俺はその人達を助けてやりたいんだ」
マスターの眼は真剣だ。そこには普段の軽い表情など微塵も感じない。


その時、169フォンと部屋のパソコンが急に鳴り響いた。その音にマスターの顔色が変わる。
「奴らだ! 場所は……ここから8キロ位か」
アル169フォンに表示された辺りの事は知っていた。確か公園があったはずだ。
「……アル、いきなり戦えと言われて納得できない事は分かる、
 だがたった今危機に晒されている人達がいるんだ。
 そいつらを……助けてやってくれ……」
アルはしばし迷ったが、意を決して169フォンを操作した。

「call 169 …standing by…」


「……変身!!」

「Complete!」


アルは部屋を飛び出した。
マスターはホッとしたように深く息を吐き出す。
「これ以上奴らの犠牲者は出してはならない……そうだろう?」
マスターは宙を見ながらそう呟いた。……その目は誰かを悼んでいるかのようにも見えた。


アルシルフィードで公道を駆けていた。
音の無い世界」に入っているため周りに車は一台も走っていない。素早く角を曲がり、目的地に辿り着く。
そこでは巨大な狼人間ワーウルフが立っていた。その足元には気絶した子供が3人ほど転がっている。
「テメェ!!」
アルは加速しワーウルフを突き飛ばす。
子供達が生きている事を確認し、シルフィードを解除して相手に向き直る。
「ガァァァァァッッッ!!」
邪魔立てが入ったことに腹を立てたのかワーウルフがアルに襲い掛かってきた。
アルは子供達が巻き添えにならないように戦いの場を遠ざけた。

アルとワーウルフの戦いは決着が長引いていた。
相手の動きは素早く、戦いに慣れていない体はその動きに付いて行けない。
装甲のおかげでダメージは少ないが相手に決定打を与えることもできなかった。
「くっ……インパクト・オン!!」
力を蓄えられた必殺の拳も読まれていたのかあっさりと避けられ、距離を取られてしまう。
拳に集約していた光が霧散した。
アルの表情に焦りが見えていた。なにしろこちらの攻撃がまったく当たらないのだから。
「武術とかやってりゃよかったな……」
その時、ワーウルフが視線を横に向ける。
つられてアルもそちらを見ると、7,8歳程度の少年がそこに立っていた。
『まさか、』
アルを脅威たりえないと判断したのか、アルを無視してワーウルフが少年に向かって駆ける。
捕らえるつもりだ!
「危ない、避けろぉぉぉッ!!」
無理な注文だと分かっていたがアルはそう叫ばずにはいられなかった。
ワーウルフが少年を捕らえようと腕を伸ばす――

が、少年はその手を危なげも無く避けて距離を取った。
このことはワーウルフにも、もちろんアルにも予想外の出来事だった。
少年はズボンのポケットから携帯電話を取り出す。

「まさか……」

「call 392 …standing by…」


「……変身」

――光が少年を包み込んだ――

「Complete!」


そこにいたのは緑と白を基調とした鎧を身に纏う少年だった。
その頭部からは猫のような耳が生え、お尻の部分から同じく猫のような尻尾が飛び出している。

「仮面……ライダー……?」
アルは驚愕を隠せなかった。

ワーウルフが緑の仮面ライダーに襲い掛かるが緑の仮面ライダーはその攻撃をかいくぐり、相手に正拳を叩きつけ、相手を吹き飛ばす。
「……ダガー・オン」
ベルトから剣の柄のような物を手に取り、そう呟くと柄から30〜40センチほどの短い光刃が発生する。
緑の仮面ライダーはそれを逆手に持ち換えると鋭い踏み込みと共にワーウルフに切りかかった。
ワーウルフはその攻撃を避けきれず、X字上にその身を切り裂かれた。


「……お前も仮面ライダーなのか?」
アルは緑の仮面ライダーに向かってそう問う。
「ええ、その通り。三日月……と申します」
三日月と名乗る緑の仮面ライダーはそう答えた。
その目には年齢に似合わない決意の光が灯っている、そんな風に見えた。



【次回予告】

【あとがき】



    

    

    


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この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。