ちょっと待て!なんでオレがこんな目にあわなきゃいけないんだ!?
ええい、ちくしょう!責任者出て来い!!
仮面ライダー169(アルキュン)

EX-03 アル(アルキュン)の受難

……朝起きたら変身していた。
いや、正確にはアーマーは身に着けておらず犬耳尻尾に低い身長、そして何故か169アクセルだけが首に装着されている。
「こ、これは……?」
おかしい。あの戦いの後169フォンは壊れてしまったはずだ。
それなのに……それなのに何故こんな中途半端に変身しているんだ?
何故? 何? Why? What's happened? どうして? 何故だ? ンナズェダ? オンドゥルルラギッタンディスカー!!
……はっ、いかん。思考が壊れて来た。
とりあえず何か着る物を用意しよう。
ぶかぶかになった寝巻きを引きずりながら押入れから子供の頃の服を取り出した。
服の上から尻尾が隠れる位の長さのコートを羽織り、犬耳を隠す為に毛織の帽子を被る。
……よし、準備完了。
とりあえずこういう時にまず行くべき所は……
「マァァァァスタァァァァァァァーーーーーーー!!!」
ドアを乱暴に開け、大声を張り上げる。
「いらっしゃ……ってアル、お前……」
「マスター、一体何なんだよこれは!!」
帽子をずらして犬耳を覗かせる。
マスターはカウンターから身を乗り出してそれを見た。
「……犬耳だな」
「そう言う意味じゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
手にした帽子を地面に叩きつける。
「オレが聞きたいのはなんでこうなっているかだ! 朝起きたらいきなりこうなってたんだぞ!?
マスター、あんたまさか妙な仕掛けしたんじゃないだろうな!?」
「とりあえず落ち着け。客がいるんだぞ?」
その言葉にびくりとし、慌てて地面に落ちた帽子を拾って頭に被る。
マスターが顎で示したその先にいたのは……
朝妃さん、アートルム、ルブルムの三人だった。
見られたのがあの事情を知っている人達でよかった……。
落ち着きを取り戻した所でマスターに聞く。
「で、何か思い当たる事は無いのか?」
うーん、とマスターはしばし考え込む。
「……もしかしたら壊れたライダーシステムの影響が変な風に残っているんじゃないか?
それが時間をおいて体に影響をもたらした……とか」
確かにそれが一番考えられる原因だろう。
「とりあえず調べておくから少しそこで待ってろ」
マスターは奥に引っ込んでいった。
「ふう……」
カウンターの席に座って溜息を吐く。
……早く元の体に戻りたい。仕事先には急病と偽って休みを取っている。
今日中に戻るのか……?
考えている途中でいきなり帽子が誰かに取り上げられる。
振り返ると、そこには悪戯な顔をした朝妃さんが帽子を片手に持って立っていた。
「あらあら、本当に犬耳が生えちゃってる」
「うわぁー……何でだろ、朝妃?」
何時の間にかアートルムも一緒に立っている。
「ちょ……返し……」
飛び上がり帽子を取り返そうとするが手が届く直前で帽子がひょい、と持ち上げられ、手が空しく宙を切った。
「うーん、こういう事は私の範疇外だし……」
「単にあんたの勉強不足なんじゃないの?」
「違うわよっ!」
「返し……返してっ……返して下さいっ!」
ぴょんぴょん、と何度も飛び上がるが、結果は変わらない。
ふと気が付き、上を見上げると二人の表情が変わっている。
『か、可愛い……』
『とても子犬チックで……ってアタシもラフェルだけど』
「……あの、朝……妃……さん?」
「ねえ、アルきゅぅん。ちょぉぉぉぉぉっとこっち来てくれない?」
「かもんかもーん」
……二人の目がヤバい。とある記憶が脳裏に蘇ってくる。
「……け、けけけ結構です!!」
帽子を諦めて店から全力で逃げ出した。
「「……残念……」」
「朝妃、あーさま。……子供をいじめるのはよくないと思うよ?」
「いじめようとなんて思っていなかったわよ! ただちょぉぉぉぉぉっと可愛がろうとしただけじゃない……」
「そうだそうだー」
「…………」
手で犬耳を隠しながら全力で町を駆ける。
こういう時に頼れるのは……
「三日月、三日月ぃぃぃぃぃぃぃ!!」
インターホンを鳴らしながら大声で叫ぶ。
しばらくしてドアが開けられ、エプロン姿の三日月が現れた。
「……アルさん? その姿は……」
「いいから少し匿ってくれ! 事情は中で話す!」
「……はあ、とりあえず中へどうぞ」
部屋の中から何か甘い匂いがしてくる。
おそらくケーキを焼いているのだろう。だから三日月がエプロンを着ていると言う訳だ。
『しかも何か妙に似合ってるし……』
「それで? 何故そのような姿になっているのですか?」
「分からん。朝起きたらこうなってた」
「はぁ、そうですか……」
――三日月ー? お客さんでも来たのー?
奥から月夜さんの声が聞こえてきた。
「はい、アルさんです。……少々訳ありの様ですが」
ぱたぱたと足音が近づいて来て、月夜さんがドアからぴょこりと顔を出す。
「あ、お邪魔してます。……三日月、悪いが何か頭に被る物を貸してくれないか? この犬耳を隠したいんだ」
「ええ、いいですよ。少し待って下さい」
部屋の奥に向かう三日月と入れ替わりで月夜さんが目の前まで歩いて来る。
「こんにちは、アルちゃん。……どうしたの? その格好……」
「オレにもよく分からなくて……
あの、とりあえずしばらくここに居ていいですか?」
月夜さんを見上げ、そう尋ねる。
「……」
「あの、月夜さん……何か……?」
「……じゅるり」
「!!??」
「いただきます」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
再び全力を以って逃げ出した。
「……冗談だったのに」
「とても冗談を言っているようには思えませんでしたが……」
月夜の後ろで帽子を手に持った三日月が冷静に突っ込みを入れた。
再び逃げ出しながら考える。
他に頼れる奴は……
「月夜! つーきーよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ドアを叩きながらその名を呼ぶ。
しばらくしてからドアが開けられた。
「なんだようるさいなぁ……ってアル? その姿は……?」
「ああもう、とりあえず話は後にしてくれ!」
「とりあえずお姉さまに相談してみろ。魔術外の事ならお手上げだろうけど」
「……早く元の体に戻りたい……」
「……まあ他に客が来てるから少しうるさいかも知れないけどゆっくりしてけよ」
「他の客?」
――ちっちゃいにいちゃん、ねえ、これにあう〜?
――あーはいはい、似合う似合う。
――ちゃんとこっち見て言ってよ!!
……ミゥとラクか。
案内された部屋に着くと、ミゥが自分の着ている服をラクに見せていた。
そこにいる夜姫さんを含めた三人がこちらに気付く。
「……アルにいちゃん、なんでちっちゃいの?」
「あらら……」
「……」
「うーん、これはあたしの管轄外ね」
「そうですか……じゃあマスターが原因を突き止めるまで待つしか……」
「まあ、その間家でゆっくりしていってよ、アルちゃん」
「ご迷惑をお掛けします……」
「ねえねえおねえちゃん、もっとほかのお洋服は〜?」
「あ、ミゥちゃん。ちょっと待っててね」
「……何の話ですか?」
「実は子供服が閉店セールで大安売りしていてね。月夜に着せようと思ってたんだけど着てくれないから……」
「代わりにミゥに、ですか」
「そ」
暫くの間ミゥによるファッションショーが続いた。
黄色のパーカー、月夜とお揃いの猫帽子に半袖の上着とスパッツ、猫柄パジャマ、浴衣、巫女服、エプロンドレス……
……ってちょっと待て! 途中から方向性が変わって来てるぞ!? 何であんな服が混じってるんだ!? 一体どこの店で買った服なんだよ!?
「ねえねえ、ちっちゃいにいちゃん。どう〜?」
「あーはいはい、似合う似合う」
「……おねえちゃん、もっとほかのお洋服ないの!?
こうなったらぜったいにちっちゃいにいちゃんにミゥのかわいさをみとめさせるんだから!!」
「えーと、他には……」
「まだあるんですか……って言うかお姉さま一体いくらお金をつぎ込んだんですか」
「それは内緒……と」
夜姫さんの視線がこちらに向く。
「…………」
「な、何か?」
「……アルちゃん、ちょっと冒険してみる気は無い?」
夜姫さんが女物の洋服を手に危険な提案をする。
「あ、じゃあこれがいい〜♪」
ミゥがその手に持っていたのは……フリルのついたピンクのワンピースだった……
しかも二着……
「アルにいちゃんとおそろい〜♪」
「あら、可愛いわね。アルちゃん、これはどうかしr」
「やっぱり世界は敵色だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
加速を発動したかのような猛ダッシュで眼前の危機から逃れる。
「……からかいすぎちゃったかな?」
「洒落にならんジョークだったぞ。
ミゥ、お前ももう少し常識って奴を覚えろ」
「うにゃ? アルにいちゃん、かわいいお洋服着たくなかったの?」
「根本的な問題に気付け阿呆」
『アル……強く生きろよ……』
月夜はそんなアルに心の中で励ましの言葉をかけた。
「はあ、はあ……」
他に、他に頼れる奴は……思い当たらない……
疲れた……もう駄目だ……走れない……
「……アルちゃん?」
見上げるとルブルムがこちらを見下ろしている。
ルブルム→朝妃&アートルム→最初の二の舞
「……うわぁぁぁぁ!?」
不吉な図式が頭に浮かび、再び逃げ出そうとするが疲労した体は言う事を聞いてくれなかった。
あっさりとルブルムに捕まってしまう。
「ひぃ!?」
「ちょ……落ち着いて! ……大丈夫だよ、僕は君の味方だから……」
後ろからルブルムの腕が優しく包んでくる。
彼女の心遣いが暖かかった……
「……あら? アルさんじゃないですか」
「色々あったみたいですね……とりあえずシャワーを浴びて来て下さい。汗と疲れを取らないと……」
ミストさんが優しい声で言った。
ミストさんはあの戦いで一度消滅して『王』に吸収されたが、
『王』を倒した時に運良く分離する事が出来、HEPUの力で体を再構築して復活を遂げていた。
以来、彼女の願い通りオレ達とは仲の良い友人として付き合っている。
シャワーを浴びてこの家に行く途中で買って来た子供服に着替えた。
「シャワー、どうも有り難う御座いました……」
「ああ、ほら……ちゃんと髪の毛乾かさないと風邪引いちゃうよ?」
ルブルムがタオルで髪の毛を拭いてくる。
「いいよ、自分でやるから……」
「だーめ。お姉さんにまかせて?」
お姉さん風を吹かせたいのだろう。強引に髪の毛を拭いてくる。
疲れて反抗する気力も無くなっていたのでされるがままにする事にした。
ルブルムがドライヤーで丁寧に髪を乾かし、櫛で優しく梳く。
心地良い感触が優しく伝わって来た。
……といきなり背中にぞわりとした感触が走る。
振り返るとミストさんが尻尾をブラッシングしていた。
「ちょちょちょちょっとミストさん!?」
「動かないで下さい。せっかく綺麗な尻尾なのですからお手入れしませんと……」
「うんうん。僕も尻尾のお手入れは欠かさないよ〜」
「……ルブルムさんも後でお手入れしてさし上げましょうか?」
「僕は自分でするから!」
「〜♪ 〜♪ 〜」
「……はぅぁ……」
ミストさんが楽しそうに鼻歌混じりに尻尾を手入れする。
うわ……結構敏感だよ尻尾……変身している時はあまり気にならなかったけど……
でもミストさんにして貰えるならこれはこれで……
「……はい、御終いです」
「あ……有り難う御座います……」
少し残念……って何を考えてるオレッ!?
そこで疲労で鉛のように重くなった体に気が付く。
「疲れが出ていらっしゃるようですね……もうお休みになった方が宜しいのではないですか?」
「何処に寝かせるの?」
ルブルムの問いに答えるように、正座したミストさんがオレの体を倒してそのまま寝かせてくる。
「……はい、どうぞ」
こ、これって……
顔が熱くなって行くのが自分でもはっきりと分かる。
「膝枕……僕も少しやってあげたかったな……」
『あうあうあうあうあうあう……』
顔を真っ赤に染めていると、ミストさんが頭を撫でて来た。
その優しい感触に落ち着きを取り戻し、気が休まっていく……
そのまま瞼がゆっくりと下がっていき、ルブルムとミストさんが優しく頭を撫でた。
「ゆっくり休んでよ。僕が一緒にいててあげるから」
「安心してお休みになって下さいね」
髪に伝わって来る優しい感触に意識が……少し……ずつ……すぅ……
「……寝ちゃったね……」
「ええ……」
「何だか……弟が出来たみたい……」
ルブルムが優しい目でアルの寝顔を眺めた。
「確かに、犬の耳も尻尾もお揃いですからね」
ミストはそんなルブルム達を微笑ましい目で見る。
「ルブルムさん。すみませんが向こうの部屋から毛布を取って来て下さいませんか?」
「うん、いいよ」
ルブルムは部屋を出て行った。
ミストが自分の膝の上で眠るアルを見つめる。
『少し、意地っ張りな所もありますけど……寝顔は可愛いものですね……』
「ん……ここは……」
目を覚めた時、辺りには見慣れた風景が見えた。……自分の部屋だ。
「……夢オチかよ……今時……」
それにしてもとんでもない夢だった。
……最後は少し役得だったが。
「……ん? 何だ、この紙……」
枕元に置いてあった手紙のような物に気が付く。
『流石にずっとあのままでいて貰う訳にもいかないので貴方の家まで送りました。
マスターにお伺いした所、原因究明にはもう少し時間が掛かるみたいです。
もう暫く待って欲しい、との伝言です。 ミスト 』
「!!??」
慌てて頭に手を遣る。そこにあった物は……
「現実オチかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

【あとがき】
第十一回:後書きよ! 私は帰って来た!!
Q:何で本編では出てこなかった面子(白昼の猫、朝靄の遠望)が出てくるんだ?
A:番外編ですから。
Q:じゃあ何でミストさんが復活しているんだ?
A:番外編ですから。それに作者自身も結構気に入っているキャラですし。
Q:……ならば何故本編をシリアスに締めておいてこう落とすんだ?
A:オチをつける事がジャスティス、真実のネタ師ですから!!
アルキュン:そんなジャスティスは海に沈めてしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
定期の方 :でも本当は喜んでたんでしょう? アルキュンのこのエッチ!(・∀・)
アルキュン:このエッチ言うな! 後アルキュンもやめいっ!!
ドタバタ→夢オチ→現実オチ。
今の時代では廃れた伝統を敢えて実行しました。
どうも、zanです。
座談会の締めの言葉通り、再び参上。
続編、来ましたよ?(邪笑)
こういうノリの作品は今まで書いた事がなかったのですが、自分では案外上手くいったと思います。
いやぁ、書いてて楽しいの何のって。
月夜(黒):……何故、我の出番が無いのだ?
作者 :アルキュンを目の前にしてR指定な展開にしないと誓えるならば出しましたよ?
月夜(黒):随分と酷な事を要求するのだな、お前は……
まあ良い。彼奴は今何処におる?
作者 :まだそれほど遠くへ行ってはいないと思われますが……それが何か?
月夜(黒):そうか、それではな。
作者 :???
(ブース外)
アルキュン:うわ、ちょ、何ですか!月夜さん!?
月夜(黒):何、あちらの我が楽しめなんだ分我が……
アルキュン:ひぃっ!?
月夜(黒):お前は随分と愛で甲斐がありそうだ……流石は弄られ上手の誘い受け、と言った所か。
アルキュン:待って下さいって言うか何処の誰が何時そんな事言いましたかっ!?
月夜(黒):周知の事実、と云う物だ。諦めよ。
……ふふ、そうやってムキになっておる顔も中々に愛らしいぞ……
アルキュン:いや、あの……か……顔……撫でないで……
月夜(黒):ふむ……この様な場面ではどのような言葉を用いるべきであったか……
うむ、思い出したぞ。あちらの我流に言うならば……
アルキュン:い、言うならば……?
月夜(黒):「いただきます」





この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。
