私の中にある僅かなわだかまり……
この感情は一体何なのでしょうか……
自問してみても、答えは出るはずもありません……
仮面ライダー169(アルキュン)

EX-02 銀の心

「オイ、何してんだ?」
「ええ、良い紅茶を見付けたので午後のティータイムを……」
「そんなモン無くても俺達は活動出来るだろうが」
私に声を掛けた人が面白くも無さそうに答えました。
「そんな事を言わずに貴方も如何ですか?」
「いらねぇよ、そんなモン。
……ったく……あのすかした奴もオメェも……同じ『王』の分身なのに何だってこんなに違うんだよ……」
去って行くその人を見送ります。
「折角の美味しい紅茶ですのに……やっぱりあの人には気に入って頂けませんでしたか……」
私は紅茶を啜り、その香りを楽しみます。
『するべき事をしてれば私達の行動に文句は言いませんけど……
やっぱりゲディヒトさんも私のこんな行動が気に入らないのでしょうか……』
カップをテーブルに置き、こんな事を考えてしまいました。
『……私、どこかおかしいんでしょうか……』
建物の中を歩いていると見知った顔を見かけました。
「こんにちは、ゴートさん。研究の方の調子は如何ですか?」
「……はかどっていない……」
相変わらず口数の少ない方ですね……。
「……研究の続きが……」
ゴートさんは先を急いでいるみたいでした。
その時、ふと思い浮かんだ事……
私達三人が共同して力を注ぎ込んだ高い知能を持つクリーチャーにライダーシステムの開発者の知識を移植したのがゴートさん。
彼ならもしかして私の抱いている疑問に……
「あの、ゴートさん……」
「……何か?」
「……いえ、何でもありません……」
考えすぎるのは良くありません。私は『王』を目覚めさせる為に生を受けたのですから……。
それ以外の事なんて……考えなくても……。
「ん……今日もいい天気ですね」
私は晴天の下で伸びをしました。
今回外に出た目的は、潜在しているHEPUが高い子供を捜す事。
下級のクリーチャーでは区別がつきませんしね。
私は町を歩いて行きます。
今日は休日なので人通りも多く、町は賑やかでした。
暫く歩いていると道の端で小さな男の子が泣いていました。
……何故そんなに気になったのかは分かりませんが、私は放っておけませんでした。
私はしゃがんで男の子と目の高さを合わせてからこう聞きます。
「……どうして泣いてるんですか?」
男の子がこちらを向きました。
ずっと泣いていたのでしょう、その目は赤くなっています。
「おかあさん……どこ……?」
……どうやら迷子のようですね。
ええと、確かこういう時は……
「ええと、迷子ですね。どの辺りで迷ってたんですか?」
「この近くの雑貨屋の前です」
ここは最寄の交番。この子のお母さんも直に此処を尋ねて来るでしょう。
私はまだ泣いている男の子の頭を優しく撫でてあげました。
「ここにいればもうすぐお母さんが来ますから。だから、もう泣かないで下さい。……ね?」
男の子は頷き、泣くのをやめてくれました。
二十分ほど経った頃でしょうか、女の人が交番を訪ねて来ました。
「おかあさん!」
男の子がその人に駆け寄ります。二人とも、とても嬉しそうでした。
おまわりさんから事情を聞いたお母さんが私に頭を下げてきます。
「貴女にはお世話になっちゃって……ホラにゃ〜、この人にお礼を言いなさい」
「ありがとう、おねえちゃん!」
「にゃ〜君、今度ははぐれちゃ駄目ですよ?」
「うん!」
二人が交番から出て行ったので、私もそろそろ御暇することにしました。
「それでは、私もこれで……」
「ご協力、ありがとう御座いました」
それから一週間ほど後、ゲディヒトさんが比較的高いHEPUを持つ人を確保した……と聞きました。
何となく興味がわいたのでその人の顔を見に行きました。
HEPUを吸収する装置に加えられていたのは……
「……にゃ〜君……」
あの時のお母さんとにゃ〜君の嬉しそうな顔が思い出されました。
「……御免なさい、でも……『王』の為……ですから……」
『…………』
私が紅茶を飲んでいるとゲディヒトさんが声をかけて来ました。
「ミストさん、少々宜しいですか?」
「はい、何でしょう?」
「『出来損ない』を渡した彼女が……月夜さんが裏切りました」
「……」
「そこで貴女に彼女の始末、若しくは『出来損ない』の奪還をお頼みしたい。
『王』の役に立たなかったとは言えど『出来損ない』の戦闘力は下級クリーチャーには十分脅威ですからね……」
「……分かりました」
私のその言葉を聞いてゲディヒトさんが何かを手渡して来ました。
「彼女と二人の仮面ライダー達の戦闘データです。まあ、まず貴女が負ける事は有り得ないでしょうが」
『主の為に自らが取っている行動に罪悪感を感じている……
……彼女と私は似ているのかも知れませんね……』
私は町を歩きながらそう考えます。
不意に香ばしい薫りが鼻腔をくすぐりました。
どうやら、喫茶店から漂って来ているみたいです。
「……少し、気分を休めましょう……」
私はその喫茶店のドアを開きました。
その店のコーヒーはとても素晴らしい物でした。
マスターの人当たりも良く、好感が持てます。
コーヒーを頼んでから少し経つと新しい客が喫茶店のドアを開きました。
「こんちわ、マス……」
でもその人は一度ドアを閉めて、また店に入って来ます。
その人の顔には見覚えがありました。
月夜さんの戦闘データにあった仮面ライダー……
「おい、何だ? ドアを開けたり閉めたりして……一体何がしたいんだ?」
「…………マ、マ、マ……」
「マ?」
「マスターの店に客が来てるぅぅぅぅっっ!!」
「開口一番で言う台詞がそれかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
此処は喫茶店なんだ! 喫茶店なら客も来る! ならば此処に客が居るのも当然だろう!?」
「いや、でも今までオレ達以外の客なんて見た事が無かったし……なあ?」
その言葉に頷いたもう一人も、仮面ライダーでした。
「ええい、お前等!今までこの店の事を何だと思ってたんだ!!?」
「閑古鳥の安住地になっている万年赤字喫茶店」
「まあ、マスターの趣味でやっている事なのでしょうから部外者の私達が文句を付ける筋合いはありませんがね」
「……お・ま・え・らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのやり取りが何だか可笑しくってつい笑ってしまいます。
「随分と仲が宜しいんですね」
「あ……いや、お騒がせしてすみませんね」
「いえ、本音で語り合える関係ってとっても素晴らしいものだと思います。
そんな友人を持っているマスターが羨ましいです」
私は二人の方に顔を向けました。
「貴方達も折角ですから少し私と一緒にお話をしませんか?」
今回の私の目的は月夜さんですから……今は彼らと戦わなくても良いですよね?
暫くお話をした後、店から出て再び月夜さんを探しに行きます。
『あの人達とは……なるべく戦いたくありませんね……』
話している内に彼らに情が移ったみたいですね……。
……今日の所は、少し私用の買い物をしてお終いにしてしまいましょう……
「ミストさん!」
帰り道でその声に気が付き、振り返るとアルさんがそこにいました。
「……あら、アルさん。奇遇ですね」
「ええ、姿を見かけたので声を掛けたんですが……迷惑でしたか?」
「いえ、そんな事はありません。……三日月さんはいらっしゃらないのですか?」
「あいつならもうすぐ追い付いて来ると……おっ、来た来た」
その向こうに見えたのは三日月さんと……月夜さんでした……。
月夜さんと彼ら……私が、考えたくなかった組み合わせ……
『やはり……こうなってしまった以上戦いは避けられませんね……』
私はアルさんが向こうを向いている内に胸中の余計な感情を押し込めました。
「三日月さん、またお会いしましたね」
「ええ、そうですね」
……そして、月夜さんに話を持ちかけます。
「あら、貴女は……」
「ああ……こいつは……」
「知っています。月夜さん、でしょう?」
「……お二人は知り合いだったのですか?」
「いや、全然知らない人だけど……」
「……そう言えば直接の面識はありませんでしたね。
月夜さん、貴女に聞きたい事があるんです。
……何故私達を裏切ったのですか? ゲディヒトさんも失望なさっていましたよ?」
三人とも私の言葉に反応し、警戒態勢を取りました。
「でも、そうなった以上貴女を放ってはおけません。
不本意なのですが……実力行使に移らせて貰います」
『……すみません、アルさん、三日月さん……
私は貴方達とは戦いたくありませんでした。
……でも、私は……『王』の為に戦わなくてはいけないんです!!』
……勝敗はあっけない物でした。
私の広範囲型の術を至近距離で受けた皆さんの変身が解除されています……。
「……まだ息があるようですね。
このまま生き延びても『王』が目覚めれば他の全てと共に滅ぼされてしまう運命なんです。
……介錯、要りますか?」
「……どう言う……意味だ……?」
「『王』の目的の為には一度そうする必要があるからです。。
……私としてはあまり本意では無いのですが、『王』の為ですから」
「……じゃあ、ボクがライダーシステムをお前達に渡したら……」
「『彼女』はとりあえず助かりますが、結局滅びの運命を受け入れざるを得なくなりますね」
「最初からボクを騙すつもりだったのか!?」
「ゲディヒトさんは嘘は付いていませんよ? ただ真実を完全には話していないだけです」
それが、ゲディヒトさんのやり方ですから……
「……やっと見付けた……オレの……戦う理由!」
アルさんが、立ち上がって来ます。
「三日月や月夜、マスターの日常をお前達が壊したんだ……そして、これからも……皆の生活を壊して行く……」
……仕方がありません……それが、私の生まれて来た意味……『王』の為に取った行動なのですから……
「オレの家族や友人も……お節介なあいつも……死なせたりしない……
皆の幸せを守る為にこのライダーシステムは作られたんだ!!
皆の幸せを、オレが守ってやる!!その為に戦う!
それがこれを作った人の……そして、オレ自身が望んだ事だからだ!
……オレは……仮面ライダーだ!!」
アルさんの言葉には、強い意志が込められていました。
戦いを完全に受け入れる事も、止めてしまう事も出来ずに躊躇っている私と違って……
……
その覚悟に私も全力で応えましょう。
もし私が私自身の力で貴方に勝てたならば、私はもう迷いません。
今は『王』の為で無く……初めて自分自身の意思で、自分自身の為に戦います!
「とても立派な思想だと思いますけど……貴方が私に勝てない事に変わりはありませんよ?」
「……そうかな?」
「call 194 …Attachment…」
アルさん行動に私は杖を構え、これから来るであろう何かに備えました。
「Complete!」
「Accelerate!」
鈍い銀色に染まったアルさんの姿が掻き消えたかと思うと全身に衝撃が走りました。
……超スピードで動いているという事ですか!
そして、アルさんがスーツの強度が低い所を見つけ出したらしく、そこに集中的に攻撃が仕掛けられてきます。
体を捻って避けようとしてもその動きに合わせて攻撃が繰り出され、逃れる事が……出来ません……
……やがてスーツに限界が訪れ、アルさんが放った止めの一撃が私のスーツを撃ち砕きました……。
『……私……負けたんですね……』
アルさん、貴方の意思は……本物でしたよ……
「……アルさん、三日月さん……それに……月夜さん……
……私、本当は戦いなんてしたく無かったんです。
……おかしいですよね? 私達は『王』の分身として生を受けたのに……私だけ、こんな性格なんです。
だから、私を止めてくれて……ありがとうございます」
――これで……もう戦わなくても……――
「私、この世界が結構気に入っていました。
美味しい紅茶も、マスターの淹れてくれたコーヒーも。
賑やかな町並みも、そして貴方達も……
もし生まれ変わり、という物があるのなら今度こそは仲の良い友人として貴方達に出会いたいですね……」
意識が……消えて行く……『王』の力に還るのですね、私……
……神様、……もし、貴方が本当にいらっしゃるのなら……消え行く私の我侭を聞いて下さい……
もし、生まれ変わりと言う物が本当にあるのならば……私は……人間になりたい……
当たり前の日々を……ありふれた日常を……でも、私が気に入っていたこの世界で彼らと同じ時間を過ごしたい……
――神様、どうか宜しくお願いします――

【あとがき】
第九回:そんな事も分からない後書きだから平気で嘘だって付けるんだ!
最終回の後書きで……と言っておきながらEX-02の後書きで再びご対面。
どうも、zanです。
今回の外伝で苦労したのは、ミストの視点。
他人は勿論、自分自身の行動の説明まで丁寧にすると何か違和感がありますね、やっぱり。
でも、それが彼女の性格ですから。





この作品は、下記サイトの創作物の設定・キャラクターを二次創作利用させて頂いてます。
