窓の中の僕は
グラスの水にさした花のよう
淡い日差しに揺れて まどろみの底
気付く夏の気配……
ずっと見ていた
見ていただけ
君が苦労している時も
誰かが傷ついている時も
立ち止まったまま
皆を眺めながら動かないで生きている
ここから動くことも出来ないまま
Tales of Symphonia
Evergreen 〜見届ける者〜

神羅

ミトスを倒し、エクスフィアを集める旅の途中イセリアに立ち寄ったロイドとジーニアス……
「おかえり〜〜〜〜♪ひっさしぶりだね♪ロイドにジーちゃん☆」
村に入るなり、突然ロイドとジーニアスに抱きついてきたのは肩までの金髪に青い瞳。
外見は15,16歳だと思われる。
彼の名前は・。
2人の幼馴染であり、理解者だ。
因みに歳は19。
童顔でさらに女と見違えるほどの整った綺麗な顔。
本人はそれを気にせず、寧ろそれを利用している。
彼を女だと思ってナンパし、我侭を聞いて奢ったり数々のプレゼントを贈った挙句、
実は男だと知ってあ灰になった男は数知れない。
さらには女装して店に入り、その容姿に物を言わせ値切るに値切って店長を泣かせた回数、星の数を越える。
「か、帰ってきてたのか?!?!」
抱き憑かれているロイドが嫌そうに――をなんとかひきはがす。
は昔から放浪癖があり、よく旅に出かけている。
1週間で帰るときもあれば半年も空けていたことも。
彼が旅に出ているときこそがロイドたちの安息の場だった。
幼馴染ということもあり、ロイドとジーニアスはに溺愛されている。
よく顔を合わせると必ずといっていいほど熱い抱擁が待っている。
そしてそんな彼らを傍らで見ながら笑うコレット。
今までと変わらない風景。
「……ほんとーに変わらないね、世界を救ったというのに」
は柔らかい微笑を浮かべる。
それを聞いたロイドたちは驚く。
彼はそれを知っているはずが……
「クス……知ってるよ。気付かなかっただろうね……オレは初めから見ていたんだ。」
優しい微笑を崩さずに言い放つ。
異様な緊迫感が漂う。
風が彼らを通り過ぎていく。
綺麗な金髪が揺れる。
黙っていればかなりの美人なのだが。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないか。それより一度家に戻ったほうがいいだろう?」
「……そうだな。次はいつ帰れるか分からないしな」
「ああ、オレが掃除しておいたよ。」
次の瞬間、ロイドは猛烈な嫌な予感に襲われた。
背筋を冷たい汗が伝っていく。
嫌な予感は当たってしまった。
ロイドは完全に石と化してしまった。
亀裂が入り、今にも崩れそうだ。
それはそうだろう。
自分の部屋をこのように改造されてしまっては。
ジーニアスも隣でぽかんと口を大きく開けたまま固まってしまっている。
だけが楽しそうな笑みを浮かべている。
「な…………な……………………な……………………」
石化から徐々に回復してきたロイドが肩を震わせる。
「なんだこれは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!?」
既に悲鳴に近い怒鳴り声。
「クスクス……埃がたまってる上片付いてなかったからオレが綺麗にリフォームしてあげたよ。感謝してね♪」
が自慢気に言う。
満面の笑みで。
「何がリフォームだッッ!!他人の家勝手に改造しやがってッッ!こんなところで寝れるかッッ!!」
瞳に涙を貯めて訴える。
が、には無駄だ。
「おや?片付いたじゃないか?何か不満があるの?」
にこやかな。
泣いているロイド。
ロイドの部屋は小さい女の子向けの部屋……といえば分かるだろうか?
そのように改造されてしまっていた。
レース付きのひらひらのピンクのカーテン、ピンクでさらに花柄の壁、ピンクの床。
何処を見てもピンクピンクピンク……まッピンクに染められていた。
ベッドもハートが飛び散っている可愛らしい毛布にハート型の枕。
極めつけ数々のぬいぐるみが添えられている。
哀れなり、ロイド……
「あ、そうそう服だって揃えてあげんだよ♪」
はピンク色のクローゼットからかなりの数の服を取り出す。
そしてロイドは着せ替え人形に…………
「おい……なんなんだよこのキグルミは?!」
に無理やり着替えさせられたロイド。
因みに今彼が着ているのはネコ耳のフードつきの……
キグルミ。
「……ねこにんだよ♪」
心底嬉しそうな。
いまだ石と化しているジーニアス。
「さ、次いこ、次〜♪」
はロイドを試着室(勝手に作った)に無理やり押し込む。
次は……
「…………、なんだ?これは?」
試着室から出てきたロイドはセーラー服……に準ずる戦闘服。
ジーニアスはすでに真っ白になっていた。
「う〜……ごめん、どうしても思い出せないや。セー●ー木星のキメ台詞」
「思い出さんでいいわ!!」
ロイドはすでに半泣き。
「じゃ次〜♪」
再び着せ替え人形。
しばらくして、ロイドが出てくる。
「…………貴様、何のつもりだ?!」
「……うん、似合ってる……」
は納得して独り頷く。
「これで黒髪だったらよかったのに……」
ただいまのロイド:某野菜王子様。
「みんなも野菜は満月の夜には外に出しちゃだめだよ♪」
「いや、それ違うよ、絶対。出しちゃいけないのは尻尾生えた野菜人間でしょ?」
ジーニアスが冷静に突っ込む。
「何で俺様がこんなコスプレ……」
微妙に超野菜人化してますよ?偽野菜王子。
「緑色の雌雄同体のナメクジ星人のほうがよかった?」
結構好きです、あの元大魔王様。
●飯を庇ったところとか。
「いや、だからって俺にコスさせるなよ……」
「う〜ん……じゃあ次はもっとマシなのにするよ♪俺の手作り♪」
は嬉々として次の衣装を用意する。
「いや、お前の手作りを着ても嬉しくないぞ……?」
「ひどいわッッ!せっかく俺が毎晩毎晩あなたを思って……夜鍋してまで縫い上げたのに!!」
はさめさめと涙を流す。
そして、その顔は夫にちゃぶ台をひっくり返された時の妻のような表情だった。
「…………いつか殺る……」
ロイドはに逆らえない己の無力さを悔いた。
そして、次の着替えへ……
…………
「これはなかなかの物だろう?」
現れたロイドを一見しては満足げに笑う。
ロイドは先ほどに比べれば確かにまだましな格好だ。
黒い燕尾服に大きい黄色の蝶ネクタイ、黒のヒールの高い靴。
大きな帽子も黒で、赤いファーのような羽飾りがついている。
そして、顔右半分は仮面で隠している。
「ル〜ラ〜ル〜ララ〜♪この部屋で踊〜り続けましょう〜♪」
ロイドはヤケになってやけに高い声で歌う。
その手には数体のマリオネット。
「うん、もうちょっと声は高いほうが雰囲気出るよ」
は頷きながら注文する。
「って俺は着せ替え人形じゃねぇ!!」
もはや着せ替え人形に成り果ててると思うが?
「他にもミイラ男みたいな透明人間の衣装とか
犬としか思えない狼に変身する人とか銀髪の吸血鬼とかあるよ?」
「俺は妖怪か!!?」
ロイドはすでにいじけてしまった。
「仕方ないな、次で最後だから我慢してよね?」
に口答えすると後が怖い、と言うことをロイドはすでに分かっていた。
そして彼が嘘を言わないことも。
次が最後と言うのだから最後なのだろう。
ロイドは仕方なく、それに従った。
「…………これは……刀か?逆刃ねえか……」
ロイドは腰に下げられた刀を抜く。
今度の衣装はどこぞの国の時代物だ。
剣士に属するものの服らしいが、妙にゆったりとしている。
おまけに胸元がはだけている。
それに、見た目も上は赤、下は白、実にシンプルなデザインだ。
「これで赤毛で長髪だったら完璧なんだけどなぁ……ねぇ、ロイド、髪伸ばさない〜?」
「伸ばすか!!」
は心底残念そうな顔をする。
「あ!いけないいけない、重要なこと忘れてた♪」
は思い出したような、何か企んでいる微笑を浮かべ、ロイドにじりじりと歩み寄る。
「な、なんだよ?!」
の右手に握られているもの……
それは油性の黒マジック……
ではなく切れ味のよさそうなメス。
「マジックじゃ生温いよね♪♪」
はメスを振りかざし、ロイドの左頬に刻み付けた。
「ぎゃああああああああ!!?」
ロイドの悲鳴が村中に木霊する。
「な、なにしやがる!!い……いてぇ〜ッッ!」
ロイドは左頬を抑えながら涙目で……いや、泣きながら訴える。
犯人のはやはり、心底楽しそうな、幸せそうな表情を浮かべていた。
「大丈夫だよ♪血は止めておいたから♪」
「そういう問題じゃねぇ!」
ロイドの左頬にはしっかりと大きな十字の傷
「飛天御剣流抜刀術はまた今度教えてあげるよ♪」
どこかで聞いたことのある流儀だ。
「……多分傷はそのうち消えるよ。そんな深くはやってないし。」
は苦笑しながらうずくまって「の」の字を書きながら泣いているロイドの背中を叩く。
無常な時計の針を痛みの分だけ戻せたなら
おかしな君との日々を溢れるくらい眺めるのに
食事が終わると5人は長かった旅の話で盛り上がっていた。
は見ていたから全て知っているのだが、彼らは彼らの視点で話をしてくれる。
もう全て見てきているのだが、個人個人の視点で聞くことは楽しく、は幸せそうに目を細める。
そして話を聞くと同時に、所々彼の見解や体験を口を挟んでいた。
「ああ、その辺り、君たちは知らなかったかもしれないんだけど、古城があったんだ。」
ロイド達は今この場にリフィルがいないことを感謝した。
この場に彼女がいたら……
暴れるリフィルに、が悪乗りして村が半壊ということもありえる。
「それはそれは大変だったんだよ〜。なんか変なのに追いかけられて殺されそうになったしさ。」
思い出しながら大きく息を吐く。
「お……お前が殺されそうになったのか?!一体どんな凄い奴なんだ?!」
ロイドが身を乗り出して聞く。
その顔は驚きに満ち溢れている。
「ねぇ……それ、なんかひどい意味含んでない?」
不満げにロイドをじっと見る。
ロイドの背中に冷汗が流れる。
「べ、別に何でもねぇよ……」
恐る恐る椅子に座りなおす。
「ま、いいや。それがね〜ほんとあの時は怖かったんだよ♪」
語尾にハートが跳んでいる所を見ると本当に怖かったのかどうかは不明だ。
「でね、オレを襲ってきたのは少年だったんだ。
……まだ10歳くらいじゃないかな?人を何人殺しても何も感じないみたいだった」
「な、何ィ?!そんなすげぇ子供がいたのか!!」
ロイドが驚いて仰け反る。
大げさな反応に見えるが、のことだ。決して大げさではない。
「で、その子は自分の身の丈ほどもあるハサミを持っていたんだ。それで僕の大切な友達も殺られた。」
「友達……いたんだ。」
ジーニアスが思わず呟く。
「ジーニアス、天国に連れて行ってあげようか♪」
は素敵な笑顔を浮かべる。
ジーニアスは真っ青になる。
「ま、今回は許してあげる♪話の途中だし」
はそのまま話を続けた。
「でね、その大きなハサミで突いて人を殺すんだ。」
「うわっ……ハサミの使い方間違ってるね。ハサミって言うものは断ち切るものじゃないか」
ジーニアスが神妙な顔で言う。
「さっすかジーちゃん♪素晴らしいツッコミだね!」
がジーニアスに抱きつく。
「それで、その子双子でね〜弟のほうが凄いんだ。全長50Mはある体格だったよ。」
「その時点で人間じゃないじゃん。」
「その双子は悪魔の子でね、生まれて3日したら死んじゃうはずだったんだ。
でも……その母親が呪文をかけて時計を止めた。
止まっていた時計塔の時計を動かしたら苦しみだして死んじゃったんだ。
その時、母親に殺されそうになったんだけど途中で助けたカラスが救ってくれたんだ♪」
っていうか……
これクロック○タワー??
「お前……どこ行ってたんだよ……」
ロイドが呆れて肩を落とす。
「クス……他にもあるよ。
なんかルシファーとかっていうおじさんに神の記述とかいうカードを渡されて勧誘されたり……
アレは凄いカードだったね!そのままバックれてきちゃった♪」
…………。
「それになんだかすごく気の合う人と会ったな〜。
全身黒ずくめのメスを持った殺人快楽血液愛好者の医者にあったり……」
ド●タージャッ○ル!!
「先刻のメスは彼から譲り受けたものだよ♪」
こいつならジャッ○ルとでも仲良く出来そうだ。
「あのさ……何処に行ってたの?」
ジーニアスが恐る恐る訊く。
「新宿」
「「「「どこの世界だ――ッッ!!?」」」」
謎だらけの人物、それが・だ!
彼には次元を越えるなど朝飯前!
不可能の文字はない。
「どこでもドアを使えば簡単にいけるよ♪」
ああ、あったらいいものベスト5には入るあの便利な道具か……
「……ロイドたちは少し変わったね。……瞳とか、凄く強くなった。」
ふ、とは優しく微笑んだ。
しかし、それはどこか悲しみを帯びた笑み。
「まぁな……お前はほんっと変わんないな」
ロイドはうんざりと返事する。
……そう、何も変わらない。
This scenery is evergreen
緑の葉が色づきゆく
木漏れ日の下で君が泣いている
いつも気付けば季節は変わっている。
咲いていた花は散り、葉は色とりどりに染まっていく。
取り残されるのはいつも自分。
「…………でも、またこうして過ごせるんだ。」
瞳を閉じる。
さまざまな思い出が脳裏に浮かぶ。
もう昔からこんな毎日が続いていた。
それがどんな時であっても。
それは今も変わらない。
彼らが少し変わっただけ。
それをずっと見てきた。
困難を乗り越え、傷ついてはそれを越えて強くなった。
変わったのはそれだけ。
この世界も変わった。
2つだった世界が1つになり、神子はいなくなった。
大きな変化をもたらした。
それでも、今ここにあるのは変わらない日常ばかり。
「強くなったな、ロイド、ジーニアス、コレット……」
は優しい微笑を浮かべ、4人を順番に見る。
ロイドとジーニアスは多少戸惑い、照れてそっぽを向く。
「何だよ……突然?」
「フフ……これなら心配なんていらないね?ロイドちゃんにジーちゃん♪」
にっこりと笑って見せる。
「その呼び方おじいちゃんっぽいよ……」
「ちゃん付けするなぁぁ!!」
思ったとおり抵抗してくれる2人。
―――そう、もう大丈夫。
もう泣いていたあの日の君はいない。
1人で歩けるほど強くなった。
もうお守り役は必要ないだろう。
「……?」
ロイドが不安げな表情でを覗き込む。
は自分が湿った表情をしているのに気付き、慌てて笑顔を見せる。
「なんでもないよ。……やっぱり皆変わったなって。
変わってないように見えても結構変わってるもんなんだね」
しかし、そう微笑むの瞳は遠くを見ていた。
「…………ねぇ、まさかまたすぐ出て行くつもりなの?」
勘のいいコレットが神妙な表情で問い掛ける。
「まぁね…………でもオレのことだろ?」
は自慢の金髪を掻きなで、微笑む。
「今度はいつ帰って来るんだ?出来れば二度と帰ってきて欲しくないけどな」
「ねぇ……まさかロイドの言うとおり、二度と帰ってこないわけじゃないよね?」
憎まれ口を叩くロイドの瞳にジーニアスの瞳にも不安の色が浮かんでいる。
「……何かあなた、変よ……?」
リフィルまでもが不安を浮かべている。
は小さく微笑み、答える。
「センセまで何だよ〜……。
でも、今度は…………ワカラナイな。また長く空けそうなんだ。
遠くまで行くからね……君たちなら俺がいなくても大丈夫だろ」
葉が風に吹かれ、擦れ合って音を立てる。
静かな空間。
「クス……そんな暗い顔しないでよ。旅立ちづらいじゃないか。
……まぁ、長く明ける分お土産は凄いものを買ってくるよ♪
ロイドとジーちゃんのためだからね♪」
はそうウィンクを投げる。
「いや、土産はいい……どうせろくなもん持ってこねぇだろ」
ロイドが露骨にいやそうに顔を歪める。
「どうせまた悪徳商人にでも捕まって変な絵ばっか買って来るんだろ」
「ずいぶんと失礼だね。人を馬鹿みたいに言わないでよ。この前勝ってきた
見ているだけで心が和みリラックスできる地獄絵図なんて素晴らしかったじゃないか。」
「地獄絵図見てリラックスなんぞ出来るかぁ!!」
「なんか持っているだけでリッチな気分になれる500万円のタコツボなんてものもあったわね……」
生まれてこの方、お土産にマトモなもの買ってきた経験ありません。
なんかどこぞの世界の鳥を連れた風変わり英雄みたいですね。
「じゃあ、今度は触るだけで心が落ち着く死刑道具とか見つけてくるよ♪♪」
「んなもん使うか!!」
気付けばいつも通りの会話。
気付けば笑っている自分がいる。
気付けば回りが少しづつ変わっていく。
その夜、祝宴で騒ぐロイドたちを傍らで見ながら微笑むがいた。
ふと、月を見上げる。
仲良さげに寄り添う2つの月。
「大丈夫…………きっと、もう大丈夫だ。この星はやっていける。彼らがいるから…………
もう、きっ大丈夫だ……ミトス、マーテル……」
誰にともなく、そう呟いた。
2つの満月が暗い夜空を明るく照らしつづけていた。
This scenery is evergreen
儚いほど途切れそうな
その手をつないで離さないように
君たちはそのままでいて。
掴んだ未来と平和
刻まれた絆
決して壊さないように―――
近づく終わりに
言葉一つ言い出せない
This scenery is evergreen
愛しい人よ
まだ村人の目の覚めない朝早く、村の端で1人の少年がもの惜しげに村を見渡していた。
優しい風が彼の金髪をくすぐる。
見慣れた村。
見慣れた人々。
懐かしげに目を細め、小さく微笑むと村に背を向けた。
――と、その時……
「ずいぶんと早い出発だな。」
突然の声に驚いて振りかえる。
そこに立っていたのは見慣れた幼馴染。
まだ眠たそうな目を必死に開けたままで保っている。
「……なんだ、ロイド。起きてたんだ?」
少年は困ったように笑い、幼馴染を見る。
昨晩の馬鹿騒ぎの疲れが抜けきってないのだろう。
「ああ……偶々、お前が1人こそこそと抜けていくのが見えたからな。」
ロイドは腹立たしげに少年を睨む。
「お前、やっぱり変だぞ……?」
真剣な表情で少年を見つめる。
「……まさかほんとに帰ってこないつもりなのか?」
しばらくの間。
それが答えを表しているようだった。
「……もしかしたら、ね。オレの役目は終わったから。
ロイドも次何時帰れるか分からないんじゃないの?」
少年は小さく微笑む。
「……何だよ、役目って?」
ロイドは訝しげな顔で少年を見る。
「クス……な・い・しょ♪人に言えるものではないのでーす♪言うと恥ずかしい♪」
少年はいつもの調子でおどけた感じで人差し指を口元に添える。。
「気持ち悪いからやめろ」
ロイドはおえ〜っと、動作に表して見せる。
「ま、そういうことだ。」
少年は真顔になり、優しく微笑む。
いつも彼らを兄のような気持ちで見守っていてくれた少年のいつもの微笑。
少年は再び背を向け、立ち去ろうとする。
「……!」
ロイドは一歩前に出て呼び止める。
は振り返らず、足だけを止める。
「……帰ってこいよ。土産は……頼むから普通の、マトモなもんで頼む。」
「…………だからわからないって……」
の声は少し困惑しているようだった。
「ったく相変わらず我侭で自分勝手だな……。
ミトスらとどういう関係だか走らないけど、お前は俺たちの幼馴染だろ。」
は驚いてロイドを見た。
「……聞こえてたんだ」
「まぁな。……とりあえず、絶対帰ってこいよ。……期待して待ってるからな。」
ロイドはそう手を振り、足を村へと向ける。
――と、その時……
「ロ〜イドッッ♪」
「どわぁぁぁぁ……?!」
危うく後ろから抱き付いてきたに押し倒されそうになって、必死に堪える。
「な、なにするんだよ!!?」
「さっすがオレの幼馴染ッッ♪
お土産はとびっきり殺傷能力抜群のギロチン買ってきてあげるよ♪」
「いらねぇ!!いらねぇからやっぱ戻ってくるな!!」
ロイドは悲鳴をあげるが、
「照れなくてもいいのに……期待して待ってろよ。」
はそれを得意の笑顔で流す。
ようやくロイドを解放すると、優しい微笑を浮かべ、片手を振る。
「じゃ、行ってくる。
……できれば君たちの手伝いでもしたいんだけど、オレがそうするわけにはいかないしね。」
「ああ。分かった。っていうか来ないでくれて助かるな……ギロチンは本当にいらんからな……」
「クスクス……じゃ、またな。ロイドも気をつけろよ。
これからこの世界を創っていくのは君たちだからね」
は村の外に消えていった。
「全く……ほんっと父親そっくりな奴だ。からかい涯がある。」
は歩きながら1人満足げな笑顔を浮かべていた。
瞼の裏にかつての友人たちの姿が鮮明に蘇る。
そして、空を仰ぐ。
――もうしばらく、見守る仕事は続きそうだよ……
夏を知らせる爽やかな風がを通り過ぎていった。
そして、時は流れ……
森に2つの影があった。
2つとも長身。
片方はストレートの金髪を肩まで伸ばし、もう片方は緩やかな波を描く金髪を長く伸ばしている。
片方は白を基調とした長いコートを纏い、片方は2重のマントを羽織り、黒を基調としている。
片方は穏やかに微笑んで、もう片方は無関心な無表情。
対照的だがどこか似ている2人。
どこか幼さを残した顔立ちの、白いコートの青年が1歩踏み出し、
穏やかな微笑を崩さす穏やかな声で尋ねる。
「……デリス=カーラーンの者だね?」
その言葉にもう片方の青年が驚き、青年を睨む。
「……クルシスの末裔か。ミトスによく似ている。『大いなる実り』を求めてきたのかい?」
「貴様、何者だ?」
「オレ?オレは=。、でいいよ♪」
睨んでくるクルシスの末裔に微笑みかける。
「名を聞いているのではない。」
「何者だーなんて聞かれたらまず先に名前を名乗ると思うケド?」
は歩み寄りながら答える。
ある程度の距離まで近づくと、足を止め青年を見る。
「邪魔をするのなら容赦はしない……」
青年が凄まじい殺気を放つ。
「クス」
は小さく笑い、
「試してみるかい……?」
目を細め、小さく笑う。
静かな、冷たい殺気が漂う。
「……ま、邪魔しに来たんじゃないんだけどね……オレは。
オレはずっとこの星を見てきた…………この星がまだ2つの世界だった頃からね。」
「そういうことか…………」
青年はそれだけ訊くと、背を向け立ち去ろうとした。
「つれないね……オレもせっかくクルシスに会ったんだ。
もう少し話してくれたっていいじゃないか。」
「貴様に付き合っている暇などない。」
即答される。
「……誰かさんとはそっくりなのに冷たいんだね〜」
は拗ねて見せる。
「…………って待ってよ!ほんとに無視する気なの!?」
去っていく青年を慌てて追いかける。
ぜひとも構ってくれといわんばかりに。
「…………大体私に何の用だ?」
青年は僅かに振り返り、を睨む。
「いや、別に。
あのミッドガルズとドンパ起こそうとする物好きもいたもんだな〜と興味があったからさ。」
「…………さらばだ。」
今度こそといわんばかりに歩き出す。
「って待って!待ってって!そこまで無関心になることないだろう?!」
はまたしても追いかける。
いい迷惑だ。
「全く……何がしたいのだ?」
青年はさすがに呆れて振り返る。
「だからお話。」
しれっとは真顔で答える。
青年は溜め息をつく。
「貴様と話している時間などない」
「つれないねぇ……まぁ……いいや。
それより、君、名前は?それくらい答えてくれたっていいでしょ〜?」
青年は振り返り、
「ダオスだ。」
そう名乗った。
うんざりしたような声色。
そりゃそうだろう。
この男と話していると誰だって疲れる。
「へぇ……じゃあオレはそろそろ行くよ。仕事がないわけじゃないんで。」
「勝手にしろ。」
ダオスはそう言うと森の中へ消えた。
はそれを見送ると、また小さく笑う。
「ひっさびさのからかい甲斐のある奴が現れたナー♪
それもオレが女だって見破るなんてな……何かプレゼントでもしようか……
やっぱり天国へ連れて行ってくれる素晴らしい装置……たしかギロチンとかいったっけ?
それがいいよね……♪♪見るだけで食欲が湧く生き血のついたギロチンがいいかな……♪」
……やはり彼は只者ではない……
それから数日間、
アルヴァニスタやベネツィアでそれはそれは楽しそうに本気で考えているの姿が見られた。
「あああ……オレの人間玩具センサーにまたしても反応が!
それも複数……またからかい甲斐のある奴らと出会えそうだな……♪」
それからアセリア暦4202〜354年の間、
世界を脅かした魔王と世界を救おうとする6人の戦士が
(おそらく同一人物と思われる)好奇心旺盛な妙に人懐っこくやたらとお茶目な、
女みたいな青年にしつこく付きまとわれたというのはまた別のお話……
終われ♪
