Final Fantasy Y

また、会う日まで


光星



――もう、会えないと思っていた。
10歳の子供が、世界崩壊で生き残る可能性なんて、0に感じたから。

だから――会えた時は、とても嬉しかったんだ。


世界が崩壊して、フィガロ城は土の中に入ったまま、出れなくなってしまった。
それを城の持ち主――エドガーが知った時、エドガーの目の前が、一瞬暗くなった気がした。
――ばあやや、大臣、城の中の者は大丈夫なのか。
それだけが心配だった。自分の城の事は、どうでも良かった。
しかし、それだけが心配じゃ無かった。他の仲間は、共に戦った仲間の事も気がかりだった。
それに、20歳近くも年が離れているのに自分が心奪われた少女……リルムの事が一番、心配だった。
だけど――10歳の子供だ。たった10歳なのに世界崩壊で生き残れるのだろうか。
いくら共に戦い、レベルを上げたとしても年は10歳のままには変わりない。
それなら、生きている可能性は……0に近い。
そう、思うだけでも嫌だった。
そう、信じたくなかったから。
今頃、何処かの町で何時もの様に楽しく、笑って過ごしているだろう。
――そうとしか、思いたくなかった。
認めるのが、怖かったから。
仕方なく、フィガロから離れ港町――二ケアに来ていた。
こんな所で、何をしようというのだろう。
町にはフィガロ城から逃げ出した、泥棒がいた。
流石に見つかっては危ないと思い、武器を調達したかったが、町を後にした。

殆ど何も考えず、ふらふらと歩いていたら、何時の間にか森に入っていた。
……何故、気付かなかったのだろう。
森の、奥深く、まるで樹海の様な所……いや、樹海その物に来ていた。
日は殆ど届かず、湿っていて、樹や、草花が腐った臭いもしている。
早くこんな所から出よう。と思ったエドガーは後ろを向いたが、出口が解らない。
それは、本当に奥深くまで来てしまった証拠でもあった。
――流石に、やばいな。
エドガーの予想は当たった。
急いで剣を抜いたのが良かった。……周りに、蛙の様な魔物――リーチフロッグが4匹も出てきたからだ。
即座に戦闘の体制に入って、剣を振り上げた。……しかし、遅かった。
4匹のリーチフロッグは一斉に空に向かって飛んだ。
――空から攻撃する気か?
こう言う手の魔物とは何回か戦った事が有る。
ジャンプし、落ちてくる瞬間に避ければ良い。
しかし、4匹の場合、1匹は避けられても……最高で2匹だ。
一瞬エドガーはどうしようかと悩んだが、方法は決まった。全員の攻撃が当たらない方法。
……時には逃げるが勝ちだ。
流石に逃げるのは嫌気がさしたが、この場合は仕方ない。
急いで樹が多い方へ走った。剣を構えて。
しばらく走ったが、追いかけてこない。どうやら逃げ切れたようだ。
「……しかし……ずっと逃げてるだけじゃ、私の体力も持たないな……」
とにかくここから出る事を最優先に、光が少しでもある方へ歩いた。
そうして数十分歩いているうちに、目の前が急に明るくなった。
別に、普段ならそんなに感じないだろうが、今の状態は暗闇から沢山の光を見る、という事になる。
少し、後ずさりしたが少したって、目が慣れて来て、前が見えるようになった。
とたんに、エドガーは目を大きく見開き、ぎょっとした。
人が倒れている。それに……あの帽子……。
「………………リルム!?」
急いでリルムだと思われる少女の傍に走った。
…………リルムだ。
「リルム、リルム!!」
何回も彼女の名前を呼んだが、リルムはピクリとも動かなかった。
急いで自分の傍に寄せたが、まるで死んでしまっている様に動かない。
――やはり、死んでしまって……?
そんな、嫌な考えが一瞬、脳裏をかすったが、リルムは静かに息をしていた。
彼女の体が上下に、規則正しくゆっくりと動いているのがその証拠だ。
一瞬、エドガーの顔がほころんだが、やはり、安心は出来ない。
確かに息はしている。傷も全然無い。しかし……。
――このまま、目を覚まさなかったら?
そう思うと胸が苦しく、目の前に、一番会いたかった人物が居るのに、涙が止まらなかった。
涙が流れているにも関わらず、エドガーはリルムをぎゅっ、と抱きしめた。

……何時間、立っただろう。
全然時間は立っていないのに、何故かもう、何日もたって居るように思えた。
仕方ない、と思い、離したくないのだが、彼女の体を離そうとした、その時……。
「……ん…………エド……ガー…………?」
「リルム!」
リルムは、目を、ゆっくりだが、少しずつ開いていった。
やっと彼女が目を開き、安心しきったエドガーは、リルムをさっきより強く、抱きしめた。
涙が、また流れてきた。悲しさじゃない。嬉しさでだ。
「ちょっと………色男、どしたの? らしくないじゃん、泣くなんて」
10歳の子供に、自分の泣き顔を見せるのは少々、恥ずかしいのだが、何故か、リルムの前なら良かった。
リルムなら、何故、泣いているのか、すべて、解ってくれると思ったから。
「嬉しいんだよ…。やっと、君が目を覚ましてくれたから……」
殆ど、泣き交じりの声だったから、声が聞こえなかった。リルムにも、自分にも。
森の木々が、風に揺れて、ざわざわと音を立てていた。
リルムは笑顔で大丈夫、と言い、そっと抱きしめられていた腕から抜け出した。

「…けど、なんで色男がこんな所に?」
2人で森を歩いている途中、リルムが不思議気に尋ねた。
「愛する人がいる所なら、火の中水の中土の中森の中空の上――だから」
「………ふぅん」
何時の間にか、夕方になっていて、森の外側に来ていた。
「リルムはこれからどうするの?」
「ん〜〜、とりあえずジドール辺りに行ってみようカナ」
ジドール…崩壊前は世界一南にある貴族の街…だったが、今はその姿も変わっているのだろうか。
「…じゃあ、また会える日まで。今度は泉の中で会う、なんてのは勘弁して欲しいよ?」
「わかった。ジドールにずっといるよ。それで、みんな見つかったら会いに来てね?」
「…………うん」
もう、仲間全員なんて揃わないとは思う。リルムだってその事は承知している。
けど、実際に一番確立の低いリルムが生きていたのだ。
それなら、他の皆だって……?
「じゃあ、そろそろリルムは行くけど。色男はこの後どうするの?」
「リルムをすぐに迎えにいけるように、皆を探してくるよ」
エドガーは、リルムを止めはしなかった。
本当は、止めたいのに。
けれども、ここで彼女のことを止めてしまったら、もう、すべてが終わってしまうから。
だから――
「絶対、すぐに迎えに行くから。また、会おう?」
「………わかった。また会おうね」
リルムの言葉が終わるか終わらない内にエドガーは、その少女を抱きしめた。
一瞬リルムは驚いたが、自分も、折角会えた仲間と本当は離れたく無いと思い、そのままにしていた。
「なんで、このリルム様が色男なんかに負けるんだろね」
「さぁ? 私の方が1枚上手なんじゃないのかな?」
「…だからって、このリルム様は落とせませんよ〜っだ!」
軽く口を横に引っ張り、舌を少し出しながらリルムが言った。
心なしか、リルムの瞳が潤んでいたのは気のせいだろうか。
それに気付いたのはエドガーだっだ。けれども、何も出来ない。
たった一人しか仲間がいないのに、10歳の彼女を慰める事なんか出来ない。
「大丈夫、大丈夫だから……」
エドガーには、その言葉しか言ってやれなかった。言えなかったのだろうか。

「うん、大丈夫だよね?」
「また、会う日まで…ね」
2人はそれぞれ反対の方に向き、ゆっくりと歩いていった。
また、会える日を信じて。
そして2人は夕暮れの中に消えていった。




また、2人が会う日は、皆が揃った、すぐ――









 

   


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